孫に生前贈与する際に活用したい4つの非課税枠を徹底解説
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孫に対して「資金を援助してあげたい」と考える祖父母の方は多いでしょう。

その都度、必要な資金を提供する方法もありますが、非課税枠をうまく活用しながら生前贈与をおこなうことで、節税のメリットを享受することができます。

本記事では、孫への生前贈与で利用できる非課税枠について詳しく解説します。

この記事でわかること
  • 生前贈与を非課税枠内で計画的におこなうことで、節税効果を得られる。
  • 基礎控除、結婚・子育て資金、教育資金、住宅取得資金が主な非課税枠
  • 制度の適用条件を守るため、税理士や金融機関のサポートを受けたほうがいい

目次

  1. 孫への生前贈与で利用できる非課税枠にはどんなものがある?
  2. 孫に生前贈与する際に活用したい4つの非課税枠
  3. 孫へ生前贈与するメリットと注意点
  4. まとめ|孫への生前贈与は専門家のサポートを受けながら活用を

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孫への生前贈与で利用できる非課税枠にはどんなものがある?

孫に生前贈与する際に活用したい4つの非課税枠を徹底解説
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孫に生前贈与する際に活用できる非課税枠には、贈与税の基礎控除と3つの特例があります。

はじめに、「どのような非課税枠があるか」と「なぜ非課税枠を利用することが重要か」をざっと確認しましょう。

孫への生前贈与で利用できる非課税枠

孫に生前贈与する際に活用できる非課税枠は以下の4つがあります。

制度 非課税枠
贈与税の基礎控除 年間110万円まで
結婚・子育て資金の一括贈与 最大1,000万円まで
教育資金の一括贈与 最大1,500万円まで
住宅取得資金の一括贈与 最大1,000万円まで

これらは単独で利用しても十分な節税効果がありますが、組み合わせて活用することで、さらに大きな節税効果を期待できます。

それぞれの非課税枠の詳細については、後ほど詳しく説明します。

祖父母から孫への生前贈与は効果的な相続税対策にもなる

これらの非課税枠を活用することで、どれくらいの節税効果があるのかについて考えてみましょう。

たとえば、基礎控除の非課税枠を10年間にわたって上限いっぱいに利用し、さらに先ほどご紹介した3つの一括贈与の非課税枠をすべて使い切った場合、孫1人当たり4,600万円を非課税で資金移動することが可能です。

非課税枠を利用して生前贈与をおこなうことで、孫の生活を支援しつつ、将来的に相続税の対象となる相続財産を減らすことが可能です。

その結果、子や孫が負担する相続税を抑える効果も期待できます。

孫に生前贈与する際に活用したい4つの非課税枠

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本記事の冒頭でご紹介したように、祖父母から孫に生前贈与する際に利用できる非課税枠には以下の4つがあります。

制度 非課税枠
贈与税の基礎控除 年間110万円まで
結婚・子育て資金の一括贈与 最大1,000万円まで
教育資金の一括贈与 最大1,500万円まで
住宅取得資金の一括贈与 最大1,000万円まで

それぞれの具体的な内容や要件について詳しく確認しましょう。

年間110万円までの基礎控除

贈与税の基礎控除は、孫に生前贈与する際に利用できる非課税枠で、非常に重要な制度といえるでしょう。

その理由として、比較的手軽に利用しやすいこと、そして、計画的に活用することでまとまった資金を非課税で移動できることが挙げられます。

贈与税の基礎控除とは、受贈者(贈与を受ける人)がその年に受けた贈与額から、基礎控除額である年間110万円を差し引いた金額に対して、税金を計算できる制度です。

つまり、年間110万円までの贈与は非課税となります。

たとえば、孫が祖父から110万円を贈与された場合、贈与税はかかりません。

しかし、孫が祖父と祖母からそれぞれ100万円(合計200万円)を贈与された場合、非課税枠の110万円を超えた90万円に対して贈与税がかかります。

・年間110万円の非課税枠は、相続時精算課税にも適用される

贈与税の制度には、「暦年贈与」と「相続時精算課税」の2種類があります。

祖父母から孫へ贈与する場合、どちらの制度も選択することができますが、年齢要件がありますので注意が必要です(年齢要件については、下記の表を参照)。

以前は、年間110万円の基礎控除を利用できるのは暦年贈与を選択した場合だけでした。

しかし、現在では税制改正により、相続時精算課税を選択した場合でも、年間110万円の基礎控除を利用することができるようになりました。

贈与税の制度 主な内容
暦年贈与 ・幅広い受贈者に利用できる
・年間110万円までの贈与は贈与税の対象にならない
相続時精算課税 ・60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫に贈与する場合のみ利用できる
・累計2,500万円までの贈与は、贈与税ではなく相続税の対象となる

注意点として、相続時精算課税を一度選択すると、その後は暦年贈与を選択することができなくなります

どちらの制度を利用するのが得策かについてはケースバイケースのため、相続に詳しい税理士に相談したうえで決めるのが望ましいでしょう。

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孫への贈与に使える制度のメリットや注意点を紹介!年間110万円まで・教育費や生活費は非課税?

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税枠

孫に贈与する際に活用したい非課税枠の2つ目は「結婚・子育て資金の一括贈与」です。

適用期限は2025年3月まででしたが、こども家庭庁が2年間の延長を要望し、2025年度の税制改正で延長される方針が示されました。

・結婚・子育て資金の用途は、結婚式、出産、不妊治療など

結婚・子育て資金の一括贈与は、親や祖父母が子や孫に対して、結婚や子育てに関連する資金を一括で贈与する際に、1,000万円までを非課税とする制度です。

贈与された資金は、結婚式、出産、不妊治療などの目的に利用することができます。

結婚・子育て資金の一括贈与は、用途が限定されるため、使い残しが発生しやすいといえます。

そのため、「何にいくら使うか」を贈与者と受贈者の間で明確にしたうえで贈与することをおすすめします。

・結婚・子育て資金の年齢要件は18歳から49歳

結婚・子育て資金の一括贈与に関する注意点として、受贈者の年齢要件を満たさない場合は課税される可能性があることが挙げられます。

この特例では、受贈者の年齢要件が18歳から49歳となっています

たとえば、40代の孫に1,000万円を一括で贈与した場合、孫が50歳になった時点で口座に残高があると、その残高に対して課税されることになります。

なお、以前は結婚・子育て資金の残高には特例税率が適用されていましたが、改正により、税率の高い一般税率が適用されるようになりました。

それだけに、使い残さないよう意識しましょう。

・結婚・子育て資金の年齢要件は合計所得1000万円以下

結婚・子育て資金の一括贈与の要件には、合計所得が1,000万円以下であることが含まれており、この点にも注意が必要です。

たとえば、孫が会社員で通常の所得が800万円であっても、副業や投資からの収入を加えると合計所得が1,000万円を超える場合は、この要件を満たさないことになります。

これを踏まえると、孫に結婚・子育て資金の一括贈与をする際には、通常の所得だけでなく、副業や投資による所得がないかどうかを確認する必要があります。

また、贈与者が亡くなった場合、使い残した分は受贈者の年齢に関係なく、相続財産として課税されます。利用する場合は、これも覚えておきましょう。

教育資金(学費)の一括贈与の非課税枠

孫に贈与する際に活用したい非課税枠の3つ目は「教育資金(学費)の一括贈与」です。

こちらの特例も適用期間があり、このコラムを執筆している時点では期限が2026年3月末となっています。

最新情報については、国税庁の公式サイトをご参照ください。

国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

この特例は、親や祖父母が子や孫に対して、教育資金を一括で贈与する際に1,500万円までを非課税とする制度です。

この特例を使って孫に生前贈与をおこなうと、入学金や授業料などの学費(通学費を含む)、学習塾、習いごとなどの用途で使うことができます。

ただし、非課税枠の1,500万円のうち、習い事に使えるのは500万円までとなっています。

日本政策金融公庫のシミュレーションによると、幼稚園から大学までの教育資金の目安額は、すべて公立の場合は約 822.5万円、すべて私立の場合は約2,307.5万円です。

最近では、物価上昇にともなって教育費が値上がり傾向にあります。

まとまった金額を受贈できるこの制度は、孫にとって大変助かるはずです。

参考:日本政策金融公庫「教育にかかる費用は?

・教育資金の年齢要件は0歳から29歳

教育資金の一括贈与においては、受贈者(子または孫)の年齢要件が0歳から29歳に設定されています。

収入要件は前年度の合計所得が1,000万円以下となっており、受贈者の年齢上限を超えると、残額に課税されます。

贈与者が亡くなった場合、子や孫が23歳以上だと使い残し分が相続財産に加算されます。

ただし、23歳以上でも大学生や大学院生などの学生の場合は加算が適用されません。

同様に、贈与者が亡くなった場合、相続財産が5億円を超えるなら、子や孫の年齢に関わらず相続財産に加算されます。

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孫へ教育資金を生前贈与するメリットと贈与の方法や注意点を解説

住宅取得資金の一括贈与の非課税枠

孫に贈与する際に活用したい非課税枠の4つ目は「住宅取得資金の一括贈与」です。

この特例の期限は、本稿を執筆している時点で、2026年12月末となっています。

最新情報については、国税庁の公式サイトをご確認ください。

国税庁: No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

この特例は、親や祖父母が子や孫に対して、住宅の購入や増改築の資金を贈与した場合、一定額まで非課税となる制度です。

非課税枠は住宅のタイプによって異なり、耐震や省エネ、バリアフリーなどの性能を備えた住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円までとなっています。

最近では、資材費や人件費の上昇などの影響で、住宅の購入費や建築費、リフォーム費などが高騰しています。

住宅取得資金の一括贈与を活用することで、孫の負担を緩和することができます。

・所得によって床面積の要件が変わってくる

住宅取得資金の一括贈与の主な要件を確認してみましょう。

まず、年齢要件については18歳以上の子や孫です。

年齢の上限に関する要件はなく、この点で使いやすい非課税枠といえます。

一方、収入要件は、贈与を受けた年の合計所得が2,000万円以下となっています。

これに加えて、以下のような「所得ごとの床面積の要件」もあります

合計所得 床面積の要件
2,000万円以下 床面積50〜240平方メートル以下
1,000万円以下 床面積40〜50平方メートル未満

※上記の合計所得は、受贈者(子や孫)の所得です。

注意点としてはこの特例を使った場合、原則として、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に贈与税の申告をする必要があります。

この申告をしなかった場合、非課税の適用を受けられない可能性があります。

さらに、贈与を受けた翌年の3月15日までに、贈与された資金を全額使い切る必要があります。

また、住宅の新築(最低限、棟上げを完了させること)や引渡しを3月15日までに終わらせなくてはならないという期限の要件もあります。

住宅取得資金の一括贈与には、居住の要件もあり、原則、翌年の3月15日までに住み始めなければなりません(最終期限は翌年の12月31日まで)。

・贈与者が亡くなっても相続財産への加算がない

住宅取得資金の一括贈与のメリットとして、贈与者が亡くなっても相続財産に加算される可能性がないことが挙げられます。

たとえば、教育資金の一括贈与は、孫が23歳以上で使い残し分があると相続財産に加算されます。

これに対して、住宅取得資金の一括贈与には、要件さえ守って利用すれば相続財産に加算されることがないため、祖父母から孫へ非課税での資金移動を確実におこなえます。

孫へ生前贈与するメリットと注意点

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ここまでご紹介してきた孫へ生前贈与する際に利用できる4つの非課税枠には、それぞれメリットがありました。

さらに、暦年贈与による孫への贈与には「生前贈与加算がない」という大きなメリットがあります。

その詳細について解説します。

孫に生前贈与するメリット|生前贈与加算の対象外である

先述の通り、贈与税の制度には「暦年贈与」と「相続時精算課税」の2種類があり、どちらも年間110万円までの基礎控除(非課税枠)がありました。

しかし、暦年贈与を選択して孫へ生前贈与をすると、「生前贈与加算の対象外になる」というメリットが享受できます。

※相続時精算課税の場合、受贈者が孫かどうかに関係なく、基礎控除分が生前贈与加算の対象外になります。

ただし、生前贈与加算の対象外になるのは、原則、孫が相続人ではない場合です。

また、孫が代襲相続人の場合は、贈与分が生前贈与加算の対象となります。

つまり、孫にあたる人でも、相続によって財産を取得する人は生前贈与加算の対象です

生前贈与加算とは、相続開始の一定期間内(加算対象期間)におこなわれた暦年贈与による贈与については、基礎控除110万円の範囲内でも相続財産に加算されることを指します。

非課税枠である年110万円の範囲内で贈与をしても、被相続人が亡くなる間近のものは、相続税の対象になるということです。

加算対象期間は、相続開始日によって以下のように定められています。

被相続人の相続開始日 加算対象期間
~令和8年12月31日 相続開始前3年以内
令和9年1月1日~令和12年12月31日 令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日~ 相続開始前7年以内
出典:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税) 2024年4月1日現在

生前贈与加算は長い期間が定められており、毎年積み上げてきた贈与の非課税枠が適用されないリスクがあります。

2025年(令和7年)段階では、相続開始前3年以内の贈与分が相続財産に加算されます。

その後、段階的に加算期間が延び、2031年(令和13年)以降は、相続開始前7年以内の生前贈与が相続財産に加算されます。

この生前贈与加算が適用されると、積み上げてきた非課税枠が無駄になってしまいます。

しかし、孫は生前贈与加算の対象外のため、贈与者の体調が思わしくなく近々相続開始の可能性があるタイミングでも気兼ねなく贈与をおこなうことができます。

孫に生前贈与する際の注意点|相続人ではない孫が加算対象になることも

前述のように、相続人ではない孫に生前贈与をした場合、生前贈与加算の対象外となります。

ただし、法的に有効な遺言書が遺されており、そこに「財産を孫に遺す」といった内容が記されている場合は、孫にも生前贈与加算が適用されます。

つまり、相続だけでなく、遺贈によって財産を取得した孫も、生前贈与加算の対象外になるということです。

孫に対して、生前贈与によって財産を渡すのと、遺贈によって財産を遺すのとどちらが有利かは、ケースバイケースです。

税理士に相談のうえ、適切に判断するのが望ましいでしょう。

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まとめ|孫への生前贈与は専門家のサポートを受けながら活用を

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本記事では、祖父母の方が孫へ生前贈与する際に利用できる非課税枠について解説してきました。

以下のような非課税枠がありました。

【贈与税の基礎控除と3つの特例】

制度名 非課税枠 主な用途 適用期限
贈与税の基礎控除 年間110万円 制限なし(自由な用途) なし
(常時利用可能)
結婚・子育て資金の一括贈与 最大1,000万円 結婚式、出産、不妊治療など 2025年3月末
(延長予定あり)
教育資金の一括贈与 最大1,500万円 学費、塾、習い事(習い事は500万円まで) 2026年3月末
住宅取得資金の一括贈与 最大1,000万円 住宅購入、建築、リフォーム 2026年12月末

【贈与税の基礎控除と3つの特例の年齢要件と注意点】

制度名 年齢要件 注意点
贈与税の基礎控除 制限なし ・贈与者ごとに非課税枠が適用
・複数人からの贈与は合算に注意
結婚・子育て資金の一括贈与 18歳~49歳 ・未使用残高に課税される場合あり
・受贈者の所得が1,000万円以下である必要
教育資金の一括贈与 0歳~29歳 ・未使用残高に課税される可能性あり
・贈与者死亡時、受贈者が23歳以上の場合は相続財産に加算される場合あり(学生を除く)
住宅取得資金の一括贈与 18歳以上 ・所得2,000万円以下が条件
・床面積や耐震、省エネ性能によって非課税枠が異なる
・利用後の申告が必要
・未使用分があれば非課税の適用外になる可能性

これらの非課税枠を組み合わせることで、贈与税を課税されずに、孫へ資金を移動させることができます。

ただし、それぞれの非課税制度に要件があるため、税理士や金融機関の担当者などのサポートを受けながら利用することをおすすめします。

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本間貴志
本間貴志(著者)
金融・不動産ライター。ビジネス書/実用書制作のプロ集団、アスラン編集スタジオの社員ライターを経て2016年に事務所を設立。これまでに著名人、起業家、エグゼクティブ層など800名以上のインタビュー実績がある。保有資格は、賃貸不動産経営管理士、WEBライティング実務士、SEO検定1級など。