贈与税がかからない方法ってある?贈与税が非課税になる特例の内容を徹底解説
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目次

  1. 贈与税がかかる仕組み
  2. 贈与税が非課税になる特例がある
  3. 特例を利用する際の注意点
  4. まとめ

通常、人から無償で財産を受け取った場合は贈与税の対象となります。贈与税の対象になった場合には、「誰から」「どんな財産を」「いくら受け取ったか」によって計算された贈与税額を納めなければなりません。

ただし、無償で財産を受け取ったからといって必ず贈与税がかかるわけではありません。

今回は贈与税がかかる仕組みと、贈与税が非課税になる特例について詳しく解説します。今後財産の受け渡しを考えている人は、ぜひ参考にしてください。

贈与税がかかる仕組み

企業ではなく人から財産を受け取った場合は、原則として課税の対象になります。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税制度」があり、贈与税を納める人、つまり財産を受け取った人がどちらかを選択できます。

ただし、相続時精算課税制度を利用する際には、所定の書類を管轄の税務署に提出しなければなりません。

また、一度相続時精算課税制度を選択すると暦年課税には戻せないなどの、相続時精算課税制度のメリット・デメリットをよく理解した上で利用しましょう。

暦年課税では、1年間(1月1日から12月31日まで)に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合に贈与税が発生します。

1人から受け取った合計額ではなく、受け取った財産の額の合計額が110万円を超えた場合に発生することに注意しましょう。

複数の人から財産を受け取った場合は、最終的に1年間で受け取った財産の合計が110万円を超えていないか確認してください。

暦年課税での贈与税の計算の仕組みは、「誰から財産を受け取ったか」によって変わります。

贈与税の対象となる財産は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に分けられ、財産を受け取った年の1月1日時点で18歳以上の人が父や母、祖父母などといった直系尊属から受取った財産は「特例贈与財産」として扱われます。

特例贈与財産に当てはまらない、直系尊属以外の人から受け取った財産は一般贈与財産に該当します。

贈与税は以下の速算表で計算できますが、特例贈与財産のほうが一般贈与財産よりも税率、控除額ともに優遇されていることがわかります。

基礎控除額である110万円を差し引いた後の金額を表に当てはめてください。金額の下に税率、その下に控除額を記載しています。

<特例贈与財産>

(直系尊属から受け取った財産で、受け取った人がその年の1月1日時点で18歳以上であること)

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 0円 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

出典:国税庁 財産をもらったとき

20歳の人が祖父から300万円の金銭を受け取った場合、基礎控除額である110万円を引いた額は190万円です。

この190万円に対して贈与税が課税されるため、上の速算表に当てはめると190万円×10%=19万円が納めるべき贈与税額になります。

贈与税を納める際には、確定申告を行わなければなりません。

申告時期は財産を受け取った年の翌年の2月16日から3月15日までで、納税もその間に行います。

納税は現金で行う必要があり、口座引き落としやクレジットカードの他、一部のキャッシュレス決済も利用できます。

一括で納めなければならないため、納税額が10万円以上と大きく、一括で納められないことに足る理由がある場合には、申請することによって5年以内の年払いに分けて納めることもできます。

ただし、この制度を利用するにあたっては担保が必要で、利子税も発生することに気をつけてください。

  • 一般贈与財産
    (特例贈与財産に当てはまらない贈与)
基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 0円 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

出典:国税庁 財産をもらったとき

一般贈与財産は特例贈与財産に比べて同じ課税金額に対する税率が高く、控除額も低いです。

そのため、受け取った相手が直系尊属でない場合は、同じ金額を受け取ったとしても納める贈与税額は高くなります。

課税金額が300万円以下なら特例贈与財産と変わりませんが、300万円を超えると税率が高くなることに注意してください。

贈与税が非課税になる特例がある

要件を満たすことで、贈与税が非課税になる特例があります。特例によって要件や非課税限度額などが異なりますので、内容を理解した上で利用しましょう。

今回紹介する特例は以下のとおりです。

贈与税が非課税になる特例
1.贈与税が非課税になる特例
2.住宅取得等資金の贈与
3.教育資金の一括贈与
4.結婚・子育て資金の一括贈与
5.夫婦間で居住用の不動産を贈与したとき
6.相続時精算課税制度

1.住宅取得等資金の贈与

2023年1月1日から2024年3月31日までに、父母もしくは祖父母などの直系尊属から住宅用の家を新築、購入、リフォームを行うための金銭を受け取った場合で、一定の要件を満たせば贈与を受けた人ごとに500万円までの贈与税が非課税になります。

さらに、新築もしくは購入、リフォームする家が省エネ等住宅に該当する場合は、非課税限度額が1,000万円になります。

この制度は2024年3月31日で終了していますが、この間に該当する贈与を受けた場合は非課税限度額までの金額について非課税扱いになりますので、忘れずに申告しましょう。

ただし、この住宅取得等資金贈与の特例は2022年以前にも存在しており、2022年以前にこの特例を利用したことがある場合は、今回は利用できません。

また、住宅ローンを利用し、住宅ローン控除を利用する場合は、家の購入や新築、リフォームにかかった費用からこの特例を受けた金額を控除した金額をもとに住宅ローン控除額を求める必要があることに注意してください。

利用するための要件

住宅取得等資金贈与の特例を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

1.金銭を受け取った人は、受け通った年の1月1日時点で18歳以上であること
2.金銭を受け取った人のその年の所得税にかかる合計所得金額が2,000万円以下であること(ただし、新築などを行う家の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は合計所得金額が1,000万円以下であること)
3.金銭を受け取った人は、受け取った時点で贈与者の子どももしくは孫など直系卑属に該当すること
4.金銭を受け取った年の翌年の3月15日までに、その金額の全額を以下に示す贈与の要件を満たす住宅の新築や購入、リフォーム費用に充てること
5.金銭を受け取った年の翌年の3月15日までに、新築や購入もしくはリフォームした家に居住しているか、3月15日以降遅滞なく居住することが決まっていること

【特例を利用するための贈与の要件】

1.家を新築するための費用に充てるための金銭
2.建売住宅もしくは1982年1月1日以降に建てられた中古住宅、もしくは地震における安全性にかかる一定の基準に適合している中古受託の取得費用に充てるための金銭
3.居住用の住宅のリフォーム費用に充てるための金銭(ただし、工事費用が100万円を超えること)

【特例を利用するための住宅についての注意点】

1.日本国内にあり、床面積が40平方メートル以上240平方メートル未満であること
2.家の新築のための費用には土地の購入に充てるための費用も含む
3.耐震性基準を満たしていない中古住宅を取得した場合でも、その後耐震改修を行って基準を満たすなどの要件を満たすこと

利用する際の手続き

贈与税の申告期間(贈与を受けた年の翌年の2月16日から3月15日まで)に、贈与税の申告書に住宅取得等資金贈与の特例を受けることを記載し、以下の書類を添付して納税者の住所地を管轄する税務署に提出します。

【必要書類】

・金銭を受け取った人の戸籍謄本
・登記事項証明書
・住宅性能証明書(省エネ住宅の場合)

また、2003年1月1日から2023年12月31日までの間に住宅取得等資金の特例を受ける場合には、相続時精算課税制度の併用が可能です。

その際には、贈与税の申告書に相続時精算課税の選択の特例を受ける旨を記載し、相続時精算課税選択届出書や登記事項証明書などの書類を添付して税務署に提出します。

2.教育資金の一括贈与

父母や祖父母などの直系尊属から教育資金に充てるための費用として受け取った金額について、要件を満たす場合に最大1,500万円までが非課税になる制度です。

この特例に当てはまる教育資金は、以下のとおりです。

・学校などに対して直接支払う費用(入学金、授業料、施設設備費、教材費用、修学旅行用の費用、給食費など)
・学校外に対して直接支払う費用で、社会通念上認められるもの(塾などに支払う費用や、習い事にかかる費用、通学に必要な定期代、学校が認めた教材費用など)

ただし、学校外に対して直接支払う費用については、費用を受け取る人が23歳に達した日の翌日以降の場合は教育訓練給付金の支給対象などの費用に限られます。

また、学校外に対して直接支払う費用の上限は500万円です。

利用するための要件

直系尊属から受ける金銭でなければならず、また受け取る人の年齢が30歳未満でなければなりません。

この特例は利用できる時期が決まっており、2013年4月1日から2026年3月31日までに受け取る金銭である必要があります。

利用する際の手続き

金銭を受け取る人が、金融機関(営業所を含む)などに教育資金非課税申告書を提出しなければなりません。ここでいう金融機関とは、信託銀行、銀行、および証券会社を指します。

教育資金口座を開設した後で教育資金を振り込み、金銭を受け取る人はその口座から必要な額を引き出して利用します。

制度を利用している間は、引き出した額を教育費用に充てたことを証明するために、領収書などを金融機関に提出する必要があります。

また、提出する期限も決まっており、教育費用を支払った後に実際に支払った金額を口座から引き出す場合は、領収書などに記載された支払年月日から1年以内に提出しなければなりません。

それ以外の場合は、領収書などに記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日が提出期限です。

3.結婚・子育て資金の一括贈与

父母や祖父母などの直系尊属から、結婚および子育て資金として受け取った金銭の一部が非課税になる特例です。

結婚資金に該当するのは、結婚式にかかる費用や結婚後に住む新居を契約する際の敷金、転居費用などです。

結婚式にかかる費用は、婚姻日の1年前以降に支払われるものでなければなりません。また、結婚資金の非課税限度額は300万円です。

子育て資金は妊娠・出産・育児にかかる費用で、不妊治療も含まれます。また、子どもの医療費や保育所などに支払う保育料も該当します。

非課税の上限額は、結婚および子育て資金の合計で1,000万円までです。

利用するための要件

この結婚・子育て資金の一括贈与の特例を受けるためには、その贈与が2015年4月1日から2025年3月31日までの間に受け取った金銭でなければならず、また、受け取る人の年齢も18歳以上50歳未満である必要があります。

利用する際の手続き

利用にあたっては、金融機関(営業所を含む)などで結婚・子育て資金口座を開設し、口座を開設した金融機関に対して「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出しなければなりません。通常、口座を開設した日に提出します。

結婚・子育て資金口座はどの金融機関でも開設できるわけではありませんので、事前に確認しておきましょう。

結婚・子育て資金は教育資金と同様に、資金使途を証明する領収書を提出する必要があります。

事前に支払った後で、その金額を充当するために口座からお金を引き出した場合は、領収書などに記載された支払年月日から1年以内が提出期限です。

それ以外の場合は、領収書などに記載された支払年月日が属する年の翌年3月15日までに、口座を開設した金融機関に提出する必要があります。

4.夫婦の間で居住用の不動産を贈与したとき

贈与税の配偶者控除の一つで、一定の要件を満たす夫婦間で居住用の不動産もしくは居住用の不動産を取得するための金銭の受け渡しがあった場合は、贈与税の基礎控除額である110万円に加えて最高2,000万円の控除が受けられます。

利用するための要件

この特例を利用するにあたっては、夫婦の婚姻期間が20年以上でなければなりません。

さらに、夫婦のどちらか(配偶者)から受け取った財産が居住用の不動産もしくは居住用の不動産を取得するための金銭である必要があります。

また、財産を受け取った側が、受け取った年の翌年の3月15日までにその居住用の不動産、もしくは受け取った金銭で取得した居住用の不動産に住んでいなければならず、その後も引き続き住み続けることが明確でなければなりません。

この特例は、配偶者が同じ場合は一生に一度しか適用されないことにも注意してください。

利用する際の手続き

この特例を受けるためには、贈与税の申告が必要です。また、申告の際には以下の書類を添付しなければなりませんので、事前に準備しておきましょう。

・財産を受け取った日から10日を経過した日以降に作成された戸籍謄本または抄本、そして戸籍の附票の写し
・居住用の不動産の登記事項証明書、もしくはその他の書類で、財産を受け取った人が居住用の不動産を取得したことを証明できるもの

金銭ではなく居住用の不動産そのものを受け取った場合は、その不動産の評価明細書も必要です。

5.相続時精算課税制度の利用

相続時精算課税制度は、財産を受け取った際に特別の控除額および一定の税率で贈与税を計算し、その後贈与した人が亡くなった時に相続税で精算する仕組みです。

そのため、贈与する人が直系尊属など将来被相続人になる人でなければ利用できません。

相続時精算課税では、相続時精算課税制度を選択した贈与者ごとに1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額(選択したときからの累計)から2,500万円の特別控除額を差し引き、残った金額に一律20%の税率を乗じて求めた贈与税を納めます。

また、2024年1月1日以降に受け通った金額については2,500万円に加え、110万円の基礎控除額も適用されます。

利用するための要件

この制度を利用するには、贈与者や財産を受け取る人が以下の要件を満たす必要があります。

・贈与者:贈与をする年の1月1日時点で60歳以上の直系尊属であること
・財産を受け取る人:財産を受け取る年の1月1日時点で18歳以上であり、贈与者の直系卑属と推定される相続人もしくは孫であること

利用する際の手続き

財産を受け取る人、つまり納税者が贈与税の申告期限内に贈与税の申告書に相続時精算課税選択届出書および必要書類を添付し、住所地を管轄する税務署に提出します。

その際には、財産を受け取る人だけでなく、贈与者の戸籍謄本なども必要です。

特例を利用する際の注意点

贈与税が非課税になる特例は多くありますが、どれも要件を満たす必要があり、利用にあたっては事前もしくは申告の際に必要な手続きを行わなければなりません。

特に教育資金の一括贈与や結婚・子育て資金の一括贈与では、贈与者が途中で亡くなった場合には口座の残額が相続税の対象になることにも注意してください。さらに、適用される期間が限られているものもありますので、利用する前に必ず確認しましょう。

まとめ

人から贈与を受けた場合は、基本的に基礎控除額である110万円を超える部分が贈与税の対象となります。しかし、一定の要件を満たすことで非課税になる特例も存在します。

特例の利用にあたっては、要件を満たしていることを確認した上で、それぞれの特例で決められた手続きを行う必要があります。

特に直系尊属から受け取った財産について非課税になる特例が多く用意されていますので、該当する場合は利用を考えてみましょう。

新井智美
新井智美(著者)
トータルマネーコンサルタント。個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間100本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,000本を超える。
公式サイト:https://marron-financial.com/
(保有資格)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・CFP®
・DC(確定拠出年金)プランナー
・住宅ローンアドバイザー
・証券外務員