貯金で運用するなら何が安全?利息を500万円でシミュレーション
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日銀のマイナス金利解除による金利の上昇で、貯金に対する関心が高まっています。

しかし、貯金といってもさまざまな種類があるので、どれを選べばいいか迷う人も多いことでしょう。

この機会に貯金することのメリット・デメリットや貯金の種類などを確認しておきましょう。本記事では値動きのない金融商品を貯金と定義して解説します。

この記事でわかること
  • 貯金で500万円を運用するメリット
  • 貯金の種類とそれぞれの特徴やメリット
  • 貯金500万円で運用したシミュレーション結果

目次

  1. マイナス金利解除で貯金に対する関心が高まっている
  2. 貯金と預金、投資の違いとは
  3. 貯金で運用する3つのメリット
  4. 貯金で運用する3つのデメリット
  5. いろいろある貯金の種類7つ
  6. 生命保険でも貯金できる?貯金の代わりになる4つの保険
  7. 貯金で500万円を運用する場合の利息シミュレーション
  8. 貯金と投資でバランスのいいポートフォリオを目指そう

マイナス金利解除で貯金に対する関心が高まっている

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2024年3月19日の日銀金融政策決定会合でマイナス金利の解除が決定されました。日銀による金利引き上げは実に17年ぶりとなります。

利上げの方法としては、日銀当座預金の適用金利を0.1%とすることで、金融機関同士が短期市場で資金をやりとりするときの金利「無担保コールレート」を0%(ゼロ金利)から0.1%程度になるように誘導します。

マイナス金利の解除を受けて、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が19日に普通預金金利をそれまでの0.001%から0.020%へ引き上げることを発表しました。

三菱UFJ銀行は定期預金も1年ものを0.002%から0.025%へ、5年ものを0.07%から0.20%へそれぞれ引き上げることも発表しています。

金利がほとんど付かない世界から金利が付く世界に変わることで、今後は貯金商品での運用も検討してもいいでしょう。

貯金と預金、投資の違いとは

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「ボーナスを貯金するか投資に回すか」など、貯金と投資は対比されることが多いです。

貯金とはその名のとおり、お金を貯めること。貯金箱に貯めることも含まれます。

値動きがないので引き出さないかぎり減ることはありません。預入期間がある貯金商品なら満期時の利率があらかじめ決まっています。

貯金と似た言葉に預金がありますが、預金は金融機関にお金を預けることを意味します。

貯金と預金の違い

貯金と預金のおもな違いですが、ゆうちょ銀行やJAバンクなどに預けることを貯金といいます。

それに対し預金は、銀行、信用金庫、信用組合などに預けることをいいます。仕組みは同じなので両者に大きな違いはありません。

投資は企業や個人にお金を拠出しリターンを得ること

一方の投資は今後成長が期待できる企業や個人にお金を拠出し、将来的に高いリターンを得ることを目的とします。

満期があるケースは珍しく、商品が値上がりすれば自由に売却してキャピタルゲイン(売却益)を得ることができます。

半面、値下がりすれば損失が発生する可能性があり、元本は保証されていません。

貯金は元本保証がある|投資はリターンもあるが損失の可能性もある

大雑把に分けると、預け入れ期間が決まっていて(普通預金を除く)、値動きがなく元本保証に近いのが貯金です。

そして、いつでも自由に売買できリターンがありますが、値動きがあるため損失を被る可能性もあるのが投資と考えればよいでしょう。

貯金で運用する3つのメリット

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貯金(預金)で運用するにはメリットもあればデメリットもあります。

両者を比較して判断する必要がありますが、メリットとしては以下の3点が挙げられます。

1. 元本保証に近く安全

普通預金や定期預金など一般的な商品は、金融機関が破綻しても預金保険制度により1つの金融機関につき元本1,000万円と破綻した日までの利息が保護されます。

したがって、2,000万円の資金なら2つの金融機関に半分ずつ預ければ、ほぼ元本保証に近く安全に運用できます。

また、決済性預金である「当座預金」や利息が付かない「無利息型普通預金」は全額保護の対象です。

一方で、外貨預金、譲渡性預金、無記名預金、架空名義の預金、他人名義の預金(借名預金)、金融債(募集債および保護預かり契約が終了したもの)等は保護の対象外(金融庁見解)になるので注意が必要です。

2. 天引きにすれば自然に貯まる

会社員の場合、財形貯蓄や社内預金の制度を利用して給料から天引き貯金することができます。

また、財形貯蓄制度などがない会社に勤めている場合でも、毎月一定の金額を給与振り込みと同じ銀行口座から自動引き落としされるように設定すれば、確実にお金を貯めることができます。貯金が苦手な人におすすめの方法です。

3. iDeCoで運用が可能

個人年金制度の1つとしてiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する人が増えています。

iDeCoは、拠出した掛金を自分で運用して資産形成し、60歳以降に老齢給付金を受けることができる年金制度です。

20歳以上65歳未満の人が加入できますが、60歳になるまで資産を引き出すことはできません。定期預金や保険商品も運用の対象なので、貯金代わりにすることができます。

定期預金の場合、通常は利息に20.315%(復興特別所得税含む)の税金が課税されますが、iDeCoで運用した場合の利息は非課税です。

貯金で運用する3つのデメリット

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貯金で運用することには以下のようなデメリットがあります。

1. NISAを利用できない

NISA(少額投資非課税制度)は「貯蓄から投資へ」をテーマに始まった制度ですので、貯金商品は対象になりません。

貯金商品は原則として利息から20.315%の所得税が源泉徴収されるので、課税されるのがもったいないと思う人は、資産の一部をNISA対象の投資に振り分けるのもいいでしょう。

2. 投資に比べて利回りが低い

貯金商品は「安全確実」に利息収入を得ることが目的ですので、リスクがある投資に比べて利回りは低くなります。

外貨預金を除いてはほとんどの商品が1%以下の低金利なので、資産運用を目的とする場合は運用効率が悪くなります。

3. 外貨預金は為替リスクがある

外貨預金で運用する場合は為替リスクがあります。

2024年5月現在は円安ドル高の流れが続いていますが、円高ドル安に流れが変わったときに為替差損が発生する可能性を考慮しなければなりません。

1ドル150円のときに米ドル外貨預金を始めて、満期時に1ドル140円の円高になれば、ドルを円に換えるときに1ドルあたり10円為替差損が発生します。

いろいろある貯金の種類7つ

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安全に運用できる貯金ですが、各金融機関にはさまざまな貯金商品が用意されています。

ゆうちょ銀行の例を中心に、それぞれの商品の特徴と利率を確認しておきましょう。なお、利率は2024年5月7日現在の数値です。

1. 通常貯金|最も利用頻度の高い

通常貯金(普通預金)は、最も利用頻度の高い商品です。

超低金利の近年はクレジットカード利用料金の引き落としなど、決済目的の利用が中心になっています。年に2回利息が支払われますが、数円程度ということが珍しくありません。

利率は、ゆうちょ銀行の通常貯金で0.020%です。

2. 定額貯金|10年間半年複利でじっくり増やせる

定額貯金は、6ヵ月経過後に自由に引き出せる貯金商品です。10年間半年複利でじっくり増やせるため、まとまったお金を預けるときに利用されています。

利率は、ゆうちょ銀行の定額貯金が3年以上で0.110%です。

3. 定期貯金|長く預けるほど有利

定期貯金(定期預金)は、あらかじめ決めた預入期間を指定して預け入れる貯金商品です。

期間は3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、3年、4年、5年から選べます。利息の計算は3年未満の商品は単利、3~5年は半年複利なので、長く預けたほうが有利です。

利率は、ゆうちょ銀行の3年もので0.150%です。

4. 積立定期貯金|決まった日に預金をして目標額を目指す

積立定期貯金は、普通貯金から預金者が指定する金額を自動的・定期的に払い戻して、定期貯金に預け入れる貯金商品です。

3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、3年、4年、5年などの期間があります。1回あたりの積立金額は1,000円以上1,000円単位です。

利率は、ゆうちょ銀行の自動積立定期貯金の場合、定期貯金の利率に準じます。

5. 財産形成貯金|給料やボーナスから天引きして3年以上継続して積み立てる

財産形成貯金は、毎月の給与やボーナスから一定額を天引きし、事業主を通じて定額貯金に積み立てる貯金商品です。

「財産形成定額貯金」のほかに、老後の生活資金準備を目的とした「財産形成年金定額貯金」と、住宅購入等の準備を目的とした「財産形成住宅定額貯金」があります。

利率は、ゆうちょ銀行の財産形成貯金の場合、定額貯金の利率に準じます。

6. 福祉定期貯金|障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取っている人が利用可能

障害基礎年金や遺族基礎年金などを受け取っている人が預け入れることができる貯金商品です。

預け入れ期間は1年で、自動継続することはできません。一般の定期貯金よりも有利な金利で運用することができます。

利率は、ゆうちょ銀行の場合、1年もの定期貯金の金利に年0.10%上乗せした利率が適用されます。

7. 外貨預金|外貨建てで預け入れる貯金商品

外貨預金は、米ドルなどの外貨建てで預け入れる貯金商品です。

円預金に比べて相対的に利率が高く、為替相場の動向によっては為替差益が発生する場合もあります。

半面、為替差損が発生して想定した手取り収入より少なくなるリスクもあり、為替両替手数料がかかるのもデメリットです。

利率は、金融機関や預金の対象になる通貨によって水準が異なります。一例として、みずほ銀行「外貨定期預金(米ドル限定)円からコース」1年ものが5.0%です。

生命保険でも貯金できる?貯金の代わりになる4つの保険

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生命保険は保障を目的とするのがメインですが、貯金代わりになる商品もあります。

貯金の代わりになる保険(掛け捨てではないもの)には、以下のような商品があります。

1. 終身保険|被保険者の死亡時に死亡保険金が受け取れる

一生涯保障を受けられるスタンダードな保険商品です。

保障を優先する人に向いています。途中解約の場合、時期によっては解約返戻金が払込保険料を上回る場合もあります。

2. 養老保険|一定の保険期間中に死亡した場合に保険金が受け取れる

あらかじめ保険期間を定め、保険期間中に被保険者が死亡した場合は死亡保険金を受け取れる保険商品です。

満期時点で生存していた場合は死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れるので、積立定期貯金と同じような性格があります。

3. 学資保険|子どもが一定の年齢に達したとき受け取れる

子ども(または孫)が一定の年齢に達したときに祝い金や満期学資金を受け取れる保険商品です。

親(または祖父母)などの契約者に万一のことが起きた場合はその後の保険料の支払いが免除されます。子どものための積立定期貯金と考えればいいでしょう。

4. 個人年金保険|契約時に決めた一定の年齢から年金が受け取れる私的保険

一定の年齢に達すると年金または一時金の形で給付金を受け取れる保険商品です。

万一支給年齢前に死亡した場合は、それまで払い込んだ保険料相当額の死亡保険金を受け取ることができます。公的年金だけでは不安な人に向いている商品です。

貯金で500万円を運用する場合の利息シミュレーション

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60歳で定年になり退職した場合、受け取った退職金の運用方法も考えなくてはなりません。

一例として500万円を貯金の性格を有する3つの商品で、10年間運用した場合に受け取れる利息をシミュレーションしてみましょう。各商品の利率は2024年5月7日現在のものです。

貯金で500万円を運用する場合の利息シミュレーション

1. 定額貯金で運用する場合

定額貯金で500万円(300万円が1口預け入れ金額の上限です。100万円×5口等の調整が必要)を利率0.110%で10年間複利運用した場合の残高の推移は下表のとおりです。

1年目 5,005,500円
2年目 5,011,006円
3年目 5,016,518円
4年目 5,022,036円
5年目 5,027,561円
6年目 5,033,091円
7年目 5,038,627円
8年目 5,044,170円
9年目 5,049,718円
10年目 5,055,273円
※満期時に受け取れる利息は5万5,273円(税引前)
※ゆうちょ銀行「定額貯金」の預入期間10年で半年複利の場合

2. 個人向け国債で運用する場合

個人向け国債は元本保証で貯金と同じように安全に運用できます。

500万円を利率0.36%の5年国債で単利運用した場合に受け取れる毎年の利息(利子)は下表のとおりです。

5年国債を満期後再度購入して合計10年間同じ利率0.36%で運用したものとして計算。個人向け国債の複利運用はできません。

1年目 18,000円
2年目 18,000円
3年目 18,000円
4年目 18,000円
5年目 18,000円
6年目 18,000円
7年目 18,000円
8年目 18,000円
9年目 18,000円
10年目 18,000円
※10年間に受け取れる利息は18万円(税引前)
※5年固定第157回債(2024年4月募集)利率0.36%で単利運用の場合

3. 外貨預金で運用する場合

外貨定期預金1年もの500万円を利率5.0%で1年間運用し、1年ごとに10年間同じ金額を預け入れした場合に毎年受け取れる利息は下表のとおりです。

10年間利率の変動がなかったものとして計算。最終的な手取り額は満期時点の為替相場によって変わります。

1年目 250,000円
2年目 250,000円
3年目 250,000円
4年目 250,000円
5年目 250,000円
6年目 250,000円
7年目 250,000円
8年目 250,000円
9年目 250,000円
10年目 250,000円
※10年間に受け取れる利息は250万円(税引前)
※みずほ銀行「外貨定期預金(米ドル限定)円からコース」1年もの、利率5.0%で単利運用の場合。預け入れ時に1米ドルあたり40銭(500万円預入の場合)、引き出し時に1米ドルあたり1円の為替手数料がかかります。

注意しなければいけないのは、最低預け入れ金額が決まっていることです。

たとえば、みずほ銀行の「円からコース」が300万円相当額以上、三井住友銀行の「パーソナル外貨定期預金」が10万円相当額以上などです。

使用したシミュレーター:CASIO「Ke!san生活や実務に役立つ計算サイト(複利)」

貯金と投資でバランスのいいポートフォリオを目指そう

貯金で運用するなら何が安全?利息を500万円でシミュレーション
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貯金だけでは資産の増えるペースが遅く、値動きのある投資ばかりだと資産を減らすリスクが高くなります。大事なのは両者を適正なバランスで運用することです。

シミュレーションで見たとおり、選ぶ商品によって受け取れる利息に大きな差があります。

安全性を重視するなら個人向け国債や定期預金、利息の有利さで選ぶなら外貨預金が適していますが、貯蓄性のある保険商品や住宅購入を目的とした財形貯蓄など、家庭の事情に合わせて選ぶのもいいでしょう。

今後再利上げが予想される金融情勢のなか、貯金と投資でバランスのいいポートフォリオを作成し、ゆとりある老後生活を目指しましょう。

※本記事は2024年5月7日現在の情報を基に構成しています。各金融商品の金利は変動する場合があります。また、シミュレーションは結果を保証するものではありません。参考程度にお考えください。