500万円を賢く運用するためのシミュレーション方法と実例
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目次

  1. 資産運用でシミュレーションが必要な理由とは?
  2. 500万円の運用をシミュレーションする方法2つ
  3. 【投資方法別】500万円の運用シミュレーション例6つ
  4. 【年代別】500〜1,000万円を運用する際のポートフォリオ4つの例
  5. 手軽に使える運用シミュレーターをご紹介

資産運用を始める前には、シミュレーションが必須です。具体的には、目標金額の達成のためにはどれくらいの元本や積立額が必要か、または元本を運用すると将来どれくらいの資産になるかを確認するための試算がシミュレーションです。

ここでは、500万円前後、または500万円以上を運用することを想定したシミュレーションをご紹介します。

資産運用でシミュレーションが必要な理由とは?

資産運用(投資)で成功するためには、シミュレーションが必要不可欠といわれます。

その理由は、シミュレーションによってご自身にとっての適切な目標額やリスク許容度などを把握しやすくなるからです。

シミュレーションを行わずに、なりゆきで資産運用を始めると、以下のような判断ができなくなってしまいます。

・ このまま資産運用をしていて目標額を達成できるか
・ 元本や積立額は適正か
・ そもそも資産運用で成功しているのか失敗しているのか など

特に、500万円前後、または500万円以上などのまとまった資金を運用する場合は、失敗してしまうとライフプランに悪影響を及ぼす可能性があります。

これを回避するためにも、投資商品を購入する前や、本格的な資産運用を始める前にシミュレーションを行うことをおすすめします。

500万円の運用をシミュレーションする方法2つ

資産運用のシミュレーション方法には次の2つの方法があります。

1.目標額に基づくシミュレーション

はじめに元本(または積立額)と目標額を決めて、それを達成するために必要な運用期間と利回りがどれくらい必要かをシミュレーションする方法です。

例えば、元本500万円で目標額2,000万円を達成したい場合、利回り5%で運用すると29年目で目標額に到達します。そのときの資産額は約2,058万円となります。
※複利計算による結果(複利周期1年で計算)

このシミュレーション結果を見て「運用期間がかかりすぎる」と感じる場合、元本500万円を増やす、利回りを高く設定するなどの調整が必要となります。

2.積立額と積立期間に基づくシミュレーション例

ご自身が負担なく続けられる運用を行っていくと、最終的にどれくらいの運用益を得られるかをシミュレーションする方法です。

以下の3つの要素を基に最終的に積み立てられる金額を割り出します。

1. 毎月の積立額
2. 想定利回り
3. 積立期間

例えば、10年間をかけて累計約500万円(月4万1,700円)を利回り5%で積み立てた場合、将来の資産額は647万5,271万円 (元本500万4,000円+147万1,271円)になります。

シミュレーション結果を見て「この資産額では足りない」と感じる場合は、500万円の元本を増やす、想定利回りを高く設定する、積立期間を長くするなどの調整が必要となります。

【投資方法別】500万円の運用シミュレーション例6つ

次に、元本500万円を基にさまざまな投資方法で運用したシミュレーション例をご紹介します。

1.定期預金による500万円の運用シミュレーション

・定期預金とは、預入期間が決まっている預金
定期預金とは、預入期間が決まっている預金で(1ヵ月〜10年程度が一般的)、満期までの間は自由に引き出すことができません。

その代わりに利率が普通預金よりも有利に設定されています。ただし、定期預金の利率は金融機関ごとに異なります。

・定期預金の運用シミュレーション例
定期預金の運用例では、ゆうちょ銀行に5年間、預金をした場合の利率は0.070%です。元本500万円にこの利率を適用した場合、1年目で受け取れる利息は3,500円です。
※表記の金利は2024年3月7日現在のものです。

この利子を2年目以降に再投資する複利(元利金継続)にするか、1年ごとの利息をそのまま受け取る単利(元金継続)にするかで最終的な受取利息は変わってきます。

単利を選択した場合の5年間の受取利息の合計は、1万8,500円(3,500円×5年)となります。なお、税引き後の利息は、1万3,945円(利率0.0557%)です。

<預入条件と将来の資産〉

・ 預入金額:500万円
・ 預入期間/5年
・ 利率 0.070%(税引後利率 0.0557%)
・ 将来の資産額:601万8,500円(税引後601万3,945円)
・ 受取利息:1万8,500円(税引後1万3,945円)

2.外貨預金による500万円の運用シミュレーション

・外貨預金とは、海外の通貨建ての預金
外貨預金とは、日本円を他国の通貨に両替して預金することです。一般的に、外貨預金といえば定期預金を指します。

外貨預金は日本の預金と異なり、利率が高い傾向があることや、為替変動の影響を受けることなどがあります。

為替変動の影響とは、具体的には円安になれば為替差益が得られ、円高になれば為替差損が発生することを指します。

・外貨預金の運用シミュレーション例
外貨預金の運用例では、SBI新生銀行に1年ものの定期預金をした場合の利率は 5.300%(税引後4.2233%)です。

元本500万円にこの利率を適用した場合、預入時のレートが1ドル150円で満期時のレートが147円(円高)だと、税引後利息+為替益は10万6,941円となります。

同条件で満期時のレートが153円(円安)だと、税引後利息+為替益は31万5,388円となります。 

〈預入条件と将来の資産〉

・ 預入通貨:米ドル
・ 預入金額:500万円
・ 預入期間/金利:1年もの/5.300%(税引後4.2233%)

預入時レート満期時レート税引後利息+為替益
1ドル150円147円(円高)10万6,941円
元本と総計:510万6,941円
153円(円安)31万5,388円
元本と総計:531万5,388円

3.投資信託による500万円の運用シミュレーション

・投資信託とは、プロが分散投資を行う金融商品
投資信託とは、大勢の投資家から集めた資金を、運用会社が株式・債券・不動産などに分散投資する商品です。運用成果は分配金として投資家に還元されます。

投資信託のメリットは、運用をプロに任せられることや、毎月100円など少額から積み立てができることです。一方で、購入時や保有時、解約時には手数料がかかるデメリットもあります。

・投資信託の運用シミュレーション例
ここでは、新NISAを活用した投資信託の積立投資をシミュレーションしてみましょう。今回は運用額を500万円とし、利回りを3%に設定しました。

500万円のうち260万円を初期投資額に設定します(成長投資枠で運用)。

そして、残りの240万円を使って毎月2万円を10年間積み立てていきます(つみたて投資枠で運用)。その結果、得られる運用益は130万3,148円です。

〈運用条件と将来の資産額〉

・ 運用金額:500万円(初期投資額:260万円、積立額240万円)
・ 積立額:毎月2万円(年間24万円)
・ 積立期間:10年間
・ 利回り:3%
・ 運用益:130万3,148円
・ 将来の資産額:630万3,148円

株式による運用例
株式とは、企業が投資家から直接資金を調達するために発行するものです。投資家は株式を保有・売買することで下記の利益を得られる可能性があります。

値上がり益株式を購入、売買した際の差益
配当金企業活動による利益の一部を株主に還元
株主優待自社製品や優待券などを提供

株式を保有することで、短期間で大きな値上がりが得られたり、安定した配当金を得られたりする可能性があります。

一方で、不景気や経営不振などの影響で株価が急落するリスクもあります。

・株式の運用シミュレーション例
人気がある株式のテーマに「連続増配株」があります。これは、その名の通り、長期間にわたって増配(前期よりも配当を増やすこと)を続けている銘柄を指します。

ここでは元本500万円、増配率10%、配当利回り2%の運用条件を設定しました。10年間で得られる運用益(累積配当金)は159万円です。

〈運用条件と将来の資産額〉

・ 元本500万円
 ※実際には株価に端数があるため、500万円前後での投資になります。
・ 増配率10%
・ 配当利回り2%
・ 運用期間:10年間
・ 運用益(累積配当金):159万円
・ 将来の資産額:659万円

4.債券による500万円の運用シミュレーション

・債券とは、国や企業などが発行する借用証書
債券とは、国や自治体、企業などが必要とする資金をつくるために発行する借用証書です。

債券を購入・保有している投資家は、定期的な利息を得ながら満期日まで保有すれば元本(額面金額)を受け取ることができます。

一般的に、債券はローリスクの運用商品といわれますが、新興国や財務状況が悪化している企業などが発行した債券はハイリスクになります。

・債券の運用シミュレーション例
ここでは、元本が保証されている日本国債(個人向け国債)でシミュレーションしてみましょう。日本国債には以下の3種類がありそれぞれ利率が異なります。

種類利率(税引前)
変動金利型10年満期(第168回)0.47%
固定金利型5年満期(第156回)0.33%
固定金利型3年満期(第166回)0.16%
※個人向け国債の利率は、発行回によって変わってきます。最新の利率は下記の財務省公式サイトでご確認ください。
出典:財務省 個人向け国債公式サイト

ここでは上記の中で一番利率が高い「変動金利型10年満期」を選択しました。

元本500万円を利率0.47%で10年間運用した場合の受取利息は1万1,750円です。なお、個人向け国債に購入金額の上限はありません。

5.不動産投資による500万円の運用シミュレーション

・不動産投資とは、賃料収入や売買益で収益を上げる仕組み
不動産投資とは、オフィスビルや商業ビル、マンションなどを購入し、その賃料収入や売買益で収益を上げる仕組みです。

入居企業や入居者が確保できれば安定した収入が得られたり、所得税や相続税の税金対策になったりするメリットがあります。一方、空室や賃料滞納などのリスクもあります。

・不動産投資の運用シミュレーション例
不動産投資の物件の購入に際してはローンを利用する割合が高いです。

ローンの条件はケースバイケースですが、属性のよい会社員がマンションを購入する場合は、自己資金なし(全額ローン)で購入することも可能です。

一般的には、物件価格の2〜3割程度の自己資金(頭金)を求められることが多いです。

ここでは自己資金500万円を用意し、2,500万円の物件を購入した場合の運用益をシミュレーションしていきます(物件価格2割の設定)。

賃料収入を11万円、返済期間を35年、金利を2%に設定すると収入と支出、そしてその差額である運用益は以下のようになります。

〈運用条件と年間運用益〉

・ 物件価格:2,500万円
・ 自己資金:500万円
・ 賃料収入:月11万(年間132万円)
・ 返済期間:35年
・ ローン金利:2%

年間収入132万円
(内訳)
月11万円(共益費込)×12ヵ月
年間支出110.6万円
(内訳)
ローン返済額:87万円/年
固定資産税、都市計画税:11万円
管理費:実質年間収入の5%
修繕費:実質年間収入の5% など
運用益21.4万円

上記は購入して1年目の収支のイメージです。2年目以降の年間の収入と支出は、築年数による家賃減少率や入居率などの影響で変わってきます。

これらは立地条件などによって異なるため、不動産会社に詳細な経営シミュレーションを作成してもらうのがよいでしょう。

また、不動産投資の年間支出はローン返済期間が終わると、「ローン返済額」の部分がなくなり一気に収益率が高まります。

これを考慮しながら、500万円前後、あるいは500万円以上の資金を不動産投資で運用するかを検討しましょう。

6.不動産小口化商品による500万円の運用シミュレーション

・不動産小口化商品とは物件を複数の投資家で運用すること
不動産小口化商品とは、複数の投資家で購入した物件(オフィスビルや商業ビル、マンションなど)を事業者が運用し、それによって得られた収益を投資家の持ち分に応じて分配する投資商品です。

通常、都心の一等地にあるような物件は億円単位の高額のため、運用できるのは一部の投資家に限られます。

しかし、資金を小口化することで高額物件でも容易に運用できます。不動産小口化商品を購入することで、不動産投資と同様の相続税対策を行うことも可能です(任意組合型の場合)。

・不動産小口化商品の運用シミュレーション例
不動産小口化商品は、投資金額に対する分配金を支払うものです。そのため、全受注の不動産投資のような複雑なシミュレーションは必要ありません。

例えば、資金の500万円(1口100万円)で不動産小口化商品を運用した場合、利率が4%なら年間20万円の運用益が得られます。同条件で不動産小口化商品を10年間運用した場合、得られる運用益の累計は200万円になります。

このようにシミュレーションが容易にできるのも、不動産小口化商品のメリットといえるでしょう。

【年代別】500〜1,000万円を運用する際のポートフォリオ4つの例

安定した運用を実現するためには、事前のシミュレーションに加えて、ポートフォリオを組んでリスク分散をすることも重要です。

ここでは年代別の500万円を運用する際のポートフォリオ例をご紹介します。

1.20代、30代のポートフォリオ例

20代、30代はリタイアまでの期間が長いという特徴があります。

この長い期間を活用してローリスク・ローリターンでコツコツ資産を増やしていく、または逆に、失敗しても取り返す期間が十分あるのでリスクを取ってハイリターンを狙うという戦略が考えられます。

後者を選択した場合のポートフォリオはこちらです。

投資信託(海外株式型など)40%
国内株式(成長株など)30%
海外株式30%
不動産投資で区分物件を所有中:ローン返済中(実質負担なし)

2.40代のポートフォリオ例

40代は老後が視野に入ってくるため資産を守りつつ、老後までの数十年を最大限に活かす戦略が求められます。

運用効率のよい投資信託や株式、不動産小口化商品の組み合わせがおすすめです。

投資信託(全世界型)25%
国内株式(連続増配株)25%
不動産小口化商品50%
不動産投資で区分物件を所有中:ローン返済中(実質負担なし)

3.50代のポートフォリオ例

50代は老後が間近に迫っているため、安全性の高い資産運用が重要となります。

ローリスクなインデックスファンド、国内債券、不動産小口化商品を柱にしたポートフォリオが考えられます。

投資信託(インデックスファンド)30%
国内債券20%
不動産小口化商品50%
不動産投資で区分物件を所有中:ローン返済中(実質負担なし)

60代のポートフォリオ例

60代はリタイヤや収入減などに対応するため、リスク回避を重視したポートフォリオがおすすめです。

国内債券と不動産小口化商品を中心にして、リスク資産の投資信託や株式の比率は限定的にしましょう。

国内債券50%
不動産小口化商品50%
不動産投資で区分物件を所有中:ローン完済。毎月の賃料収入が私的年金に

手軽に使える運用シミュレーターをご紹介

この記事を通して、運用シミュレーションの重要性と方法についてご理解いただけたのではないでしょうか。

積立額や積立期間に合わせて、あるいは投資商品別など、さまざまな角度からシミュレーションしてみましょう。

より手軽に運用シミュレーションを行う方法としては、無料で使えるシミュレーターの利用があります。おすすめのシミュレーターをいくつかご紹介しますので、目的に合わせて使い分けてみてください。

用途:積立運用のシミュレーション
・ 金融庁 NISA特設サイト「資産運用シミュレーション

用途:複利の計算
・ CASIO keisanサービス「複利計算(元利合計)

用途:不動産投資のキャッシュフロー計算
・ オリックス銀行「キャッシュフローシミュレーター

本間貴志
本間貴志(著者)
金融・不動産ライター。ビジネス書/実用書制作のプロ集団、アスラン編集スタジオの社員ライターを経て2016年に事務所を設立。これまでに著名人、起業家、エグゼクティブ層など800名以上のインタビュー実績がある。保有資格は、賃貸不動産経営管理士、WEBライティング実務士、SEO検定1級など。