1,000万円はある程度まとまった資金であり、さまざまな投資商品での運用が可能です。
本記事では、1,000万円の投資先として「株式」「債券」「投資信託」「リート」「不動産小口化商品」「金投資」の6つに絞り、それぞれの特徴と投資する際の注意点について解説します。また、新NISA(つみたて投資枠、成長投資枠)で投資できる商品も紹介します。
投資初心者の人にもわかりやすい内容になっていますので、ぜひご一読ください。
資産運用とは
資産運用には「貯める資産運用」と「増やす資産運用」があります。
「貯める資産運用」は確実に資産を貯めることが目的になりますので、元本保証のある「預貯金」が主な投資先となります。得られる利益は利子のみです。
「増やす資産運用」は元本の値上がり益(キャピタルゲイン)と利子や配当、分配金など(インカムゲイン)を期待して、資産を増やすことを目的に運用します。
増やす資産運用の商品には、「株式」「債券」「リート」「投資信託」などがあります。一般的に資産運用というと、増やす資産運用を指します。
1,000万円を一括投資するメリット・デメリット
1,000万円の投資方法には「一括投資」と「分散投資」があります。
「一括投資」は1つの銘柄(株式や債券)や投資信託などに集中投資を行う投資方法です。「分散投資」には、「時間分散」「銘柄分散」「資産分散」「地域分散」などがあります。「時間分散」以外は、「投資信託」の銘柄を選ぶことで、投資家があまり手間をかけずに行うことができます。
投資するタイミングを分ける「時間分散」は、「つみたてNISA」の制度がスタートした2018年以降に注目を浴びるようになった分散投資の方法です。
一括投資のメリット
「一括投資」のメリットは、多額の資金を一度に投資することで、投資した商品の価格が購入時より上昇すれば大きなリターンを得られることと、利子や配当も最初からまとまった金額を受け取れることです。
例えば、配当利回り5%の銘柄に1,000万円投資した場合は50万円を受け取れます。100万円の場合は5万円です。
一括投資のデメリット
一方で、投資した商品の価格が大幅に下がると、損失が大きくなるというデメリットもあります。
また、一括投資を行った場合は追加で投資できる資金がないため、価格が下がった時は上がるまで待つか、売却して損失を出すしかないこともデメリットといえます。
投資のタイミングを分ける時間分散には「定期購入」と「随時購入」があります。
定期購入は、毎月など一定期間ごとに同じもの(投資信託や株式)を購入する投資方法です。その1つが定期的に定額投資する「ドルコスト平均法」です。
ドルコスト平均法は、基準価額が高い時には購入できる口数が少なくなり、基準価格が低い時には多くの口数を買える投資方法で、平均購入単価を下げる効果が期待できます。
ただし、右肩上がりの相場では時間が経つほど高い価格で購入することになるため、その効果はありません。
1,000万円を使って投資!おすすめの投資方法6選
1,000万円の投資先として、比較的投資しやすい「株式」「債券」「投資信託」「リート」「不動産小口化商品」「金投資」を紹介します。それぞれの「投資方法」と「投資をする上での注意点」をまとめました。
1.株式投資:証券会社を通して上場している株式へ投資する方法
株式投資には、すでに東証などに上場している企業の株式へ投資する方法と、新規に上場する企業へ投資するIPO(新規公開株)投資があります。
ここでは、上場している企業の株式への投資について説明します。株式投資は、証券会社を通して上場している株式へ投資する投資方法です。
期待できる利益は「値上がり益」「配当」「株主優待」です。どれを重視するかによって、銘柄の選び方が変わります。値上がり益を重視する場合は、成長が期待できるグロース株が対象になります。
配当重視の場合は、景気の変動の影響を受けにくい企業(ディフェンシブ銘柄)が投資対象になります。
「株主優待」はすべての上場企業が行っているわけではないので、株主優待を行っている企業や優待の内容を事前に調べる必要があります。
また、必要な保有株数などが決められている場合があるので注意しましょう。
通常、株式の取引は100株単位で行われます。ですから、株価が3,000円の銘柄の場合は、30万円(3,000円×100株)と売買手数料がかかります。
最近は個人投資家が株式投資をしやすいように、東証(東京証券取引所)が取引単位を50万円以下にするように上場企業に要請していますので、1,000万円の投資で20銘柄以上に分散して投資することも可能です。
また、株価が割安か割高かを判断する物差しとして「PER(株価収益率)」と「PBR(株価純資産倍率)」などが利用されます。
PERは、株価が1株当たりの当期利益の何倍になっているかを示す数値です。PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍になっているかを示す数値です。
株式は、価格上昇による「キャピタルゲイン」を重視する投資家に向く投資商品といえます。
株式投資をするときの注意点
株式投資で注意する点は、「価格変動リスク」と「信用リスク」です。それにより、購入時より株価が下がったり、無価値になったりする場合もあります。
「価格変動リスク」は、今後の企業業績の見通しや景気の見通し、為替の動きなどによって株価が変動するリスクです。
「信用リスク」は、企業の財務状態の悪化などにより倒産するリスクです。
海外株へ投資した場合は、「為替変動リスク」「カントリーリスク」が加わります。
2.債券:国や企業が投資家から資金を調達する手段
債券は、国や企業が投資家から資金を調達する手段です。株式と大きく違うのは、債券には満期(償還)があることです。満期が来ると、額面金額(元本のようなもの)を投資家に返還します。
また、債券には「定期的に利子を払うタイプ」と「利子の支払いをしないタイプ」があります。
「利子の支払いをしないタイプ」は、発行時の価格をディスカウントすることで額面金額との差額を設け、それを利子の代わりとします。
また、「定期的に支払うタイプ」で固定金利の場合は、受け取る利子と額面金額から満期までの利益を投資する前に計算できます。
価格上昇による「キャピタルゲイン」よりも、利子による「インカムゲイン」を重視する投資家に向く投資商品といえます。
債券投資をするときの注意点
債券投資での注意点は、株式と同様に「価格変動リスク」と「信用リスク」があることです。
「価格変動リスク」は、満期(償還)まで保有すれば回避できます。債券価格は、発行から満期までの間は市場で取引が行われ、価格が変動します。途中で売る場合は市場価格で売ることになるため、売却損が発生する場合があります。
「信用リスク」は、発行体(債券を発行した国や企業)の財務状況が悪化して利子の支払いが遅れたり減ったり、元本が減ったり支払われなくなったりするリスクです。
また、外貨建ての債券には株式と同様に「為替変動リスク」と「カントリーリスク」が加わります。
3.投資信託:多くの投資家から資金を集めプロが運用する方法
投資信託は、多くの投資家から資金を集め、それをプロの投資家(ファンドマネージャー)が運用して得た収益を投資家に分配する投資商品です。
主な投資先は株式や債券、リートなどです。また、日本以外の先進国や新興国、全世界を投資対象とした投資信託(ファンド)もあります。
それ以外に、「バランスファンド」という1つのファンドで複数の資産(株式や債券、リートなど)に投資するタイプもあります。
投資信託の運用方法には、市場全体の値動きとの連動を目指す「パッシブ運用」と、市場平均を上回る運用を目指す「アクティブ運用」があります。
「インデックス運用」は、日経平均やS&P500指数などの指数に連動するように運用される「パッシブ運用」の1つです。
ファンドによって異なりますが、分配金による「インカムゲイン」よりも、基準価額の上昇による「キャピタルゲイン」を重視する投資家に向く投資商品といえます。
投資信託への投資するとき注意点
投資信託で注意したいのは、「価格変動リスク」と「信用リスク」があることです。投資対象が海外の場合は「為替変動リスク」もあります。
「価格変動リスク」は、投資先の価格(株価など)が変動することによって基準価額が変動するリスクです。「信用リスク」も、投資先の財務状況が影響して基準価額が変動するリスクです。
インデックス運用が連動する指数に影響されるのに対して、アクティブ運用(アクティブファンド)は、ファンドマネージャーの運用の巧拙が大きく影響します。
どちらの運用方法も、ある程度の期間の運用実績(5年程度)を参考にファンドを選ぶとよいでしょう。
4.REIT(リート):投資家から集めた資金でプロが不動産を購入する方法
REIT(リート:不動産投資信託)は、多くの投資家から集めた資金で投資法人が不動産(オフィスビルやマンション、商業施設など)を購入し、そこから得られる賃料収入や不動産の売却益を投資家に分配する投資商品です。
主な投資先は、個別のJ-REITやETF(上場投資信託)、投資信託です。
ここでは、J-REITについて説明します。J-REITは、東証(東京証券取引所)に上場しているリートです。
J-REITは1つの銘柄で数十件以上の不動産を保有・運用しているので、一銘柄への投資でも分散投資の効果が期待できます。
債券に比べて高い利回りが期待できるのが、リートの魅力です。REITは価格上昇による「キャピタルゲイン」よりも、分配金による「インカムゲイン」を重視する投資家に向く投資商品といえます。
REITへの投資をするときの注意点
REITへの投資で注意したいのは、「空室リスク」と「災害リスク」があることです。
REITの主な収益は賃料収入であるため、空室になることで賃料収入が減って分配金も減る「空室リスク」があります。また、火事や地震などの「災害リスク」もあります。
災害リスクを軽減する方法に「地域分散」があります。先進国を対象としたREITファンドは、日本以外に米国やオーストラリア、英国などのREITへも投資しています。
REITの分配金利回りは、国債の利回りと比較されます。国債の利回りをある程度上回っていないと、REITから国債へ資金がシフトして価格が下がることがあります。
5.不動産小口化商品:不動産を小口化して複数の投資家に販売する商品
不動産小口化商品は、1つの不動産を小口に分けて投資をしやすくした投資商品です。例えば1億円の物件を100口に分けて、1口100万円で販売します。
1口の価格は運用形態(匿名組合型や任意組合型など)によって異なり、数万~100万円程度と差があります。
物件はマンションやオフィスビルなどが多く、そこから得られる賃料収入を投資家に分配します。
物件選びは不動産のプロが行い、事業者が管理・運営します。アパート経営などの不動産投資とは異なり、投資家は物件管理の手間を省けます。
賃料収入が主な収益なので、長期投資をしたい投資家に向く投資商品といえます。
不動産小口化商品へ投資するときの注意点
不動産小口化商品への投資で注意したいのは、REITと同じように「空室リスク」や「災害リスク」があることです。
また、REITのように複数の物件を保有・運用するのではなく、一棟物件を保有・運用するので、REITのように分散投資の効果は期待できません。
ただし、投資家自身が複数の不動産小口化商品を保有することで、分散効果を高めることはできます。
さらに、REITのように市場で売買できないので、換金性が低いというリスクもあります。
6.金投資:金(ゴールド)を売買する投資商品
金投資には現物を保有して値上がりを期待する方法と、金価格の値動きによる利益(購入時と売却時の差)を期待する方法があります。
現物投資には、インゴット(延べ棒)や金貨(コイン)を購入する方法の他に純金積立もあります。
金に投資する方法には、金先物や金ETF、金を投資対象にした投資信託の購入などがあります。投資金額が大きくなるのは、現物への投資です。
金投資の特徴は、世界中で価値を認められた資産なので安全性や信頼性が高い点とインフレに強い点です。金投資は積極的に収益の拡大を目指すより、資産を守るような投資をしたい人に向いています。
金への投資するときの注意点
金投資で注意したいのは、金は債券のように利子を生まないため、値上がり益(キャピタルゲイン)のみが利益になる点です。
また、現物投資では「盗難リスク」に備えるため、保管料などの費用が発生する場合があります。
新NISAを活用できる投資商品4選
新NISAは、投資枠の種類によって投資できる資産が変わります。「つみたて投資枠」の投資商品は、金融庁が定めた基準をクリアした282本(2024年2月29日現在)の「投資信託」と「ETF(上場投資信託)」です。
「成長投資枠」では、「投資信託」「ETF」「個別株式」「REIT」へ投資できます。ただし「毎月分配型の投資信託や個別株式で監理・整理銘柄への投資は不可」など、成長投資枠にも金融庁が設けたルールがあります。
また「債券」や「金」は、投資信託やETFでの運用に限られます。「不動産小口化商品」は、新NISAでは利用できません。
ここからは、新NISAでの「投資信託」「個別株式」「REIT」「ETF」の活用法を見ていきます。
1.投資信託の活用法
投資信託は、銘柄は制限されますが「つみたて投資枠」「成長投資枠」ともに利用できます。「つみたて投資枠」の対象商品は、1,800万円まで投資できます。ただし、「つみたて投資枠」の年間投資枠は120万円です。
「成長投資枠(つみたて投資枠対象商品除く)」の対象商品は最大1,200万円、年間240万円まで投資できます。
1,000万円を運用する場合、どちらの枠に投資をしても上限を超えることはありません。ただし、年間投資枠は両投資枠の合計360万円が上限になるので、時間分散の投資になります。
2.個別株式の活用法
個別株式は、成長投資枠でのみ運用できます。成長投資枠は年間240万円までなので、通常の株取引では株価が2万4,000円を超える銘柄への投資はできません。
ただし、東証(東京証券取引所)が上場企業に購入単位(100株)の価格を50万円未満にするよう要請していますので、今後は株式分割が行われ、投資できる銘柄が増えていくと考えられます。
3.J-REITの活用法
J-REITは成長投資枠でのみ運用でき、1口単位で購入できます。
1口の価格は数万~100万円程度(2024年3月5日現在)なので、どの銘柄も成長投資枠で投資できます。また、バランスファンドに組み入れ得られているREITであれば、選択肢は限られますが「つみたて投資枠」でも購入できます。
REITのみを投資対象にした投資信託やETFは、「成長投資枠」で投資します。なお、J-REITやETFの取り扱いは証券会社のみなので、注意しましょう。
4.ETF(上場投資信託)の活用法
ETF(上場投資信託)の取り扱いも証券会社のみです。
購入単位は1口、10口など、ETFによって異なります。高くても数万円程度で購入できる銘柄がほとんどなので、1銘柄で年間投資枠を超えることはないでしょう。
数は少ないものの、「つみたて投資枠」で購入できる銘柄もあります。
新NISAで購入できないETFは、投資信託と同じように毎月分配や信託契約期間20年未満、ヘッジ目的以外のデリバティブ取引を利用した運用に該当する銘柄です。
まとめ
投資資金が1,000万円あると「株式」「投資信託」「リート」など、多くの投資商品で資産運用ができます。
本記事では、投資初心者でも比較的取り組みやすい投資商品を選び、その仕組みや注意点について説明しました。
また、1,000万円を一括投で投資することはできませんが、新NISAで利用できる投資商品も紹介しました。今後資産運用を行う際に、参考にしていただければ幸いです。