「生命保険は保障のため」というイメージが強いですが、実は資産運用としても活用できることをご存知でしょうか?
従来は貯蓄性の高い商品が多い傾向がありましたが、近年、投資環境の変化にともない生命保険にも投資性の高い商品が登場しています。
保障を受けながら資産形成も両立できる魅力的な選択肢として注目を集めています。
しかし、投資性が高い保険には、通常の保険とは異なる特徴やリスクも存在します。
本記事では、生命保険で資産運用をおこなうメリットやデメリット、どのような人に向いている商品なのかなどを解説します。
- 投資性の高い保険には、変額保険、外貨建て保険がある
- 生命保険による資産運用はリスクが低く節税効果がある
- 投資性の高い保険は他の投資と比較するとリターンは低い
目次
生命保険でおこなう資産運用とは
はじめに、そもそも「資産運用」とは具体的にどのような行為を指すのか、生命保険を活用した資産運用をおこなうのはどのような仕組みなのかについて解説します。
そもそも「資産運用」とは?
「資産運用」とは、自分が所有する資産(=預貯金、株券、不動産など)を、投資などを通じて運用し効率的に増やして、より大きな資産を形成することを指します。
たとえば、持っているお金をただタンスに入れているだけでは、そのお金は額面から変化しません。
しかしお金を銀行などに預けると利息がつきます。
何もしていなくても利益を得られる(=資産が増える)ので、これも立派な投資といえます。
ただし、近年は金利が非常に低い状況が続いており、定期預金でも元本が増えることはほとんど期待できません。
そのこともあり、近年は資産を積極的に運用して、将来に向けてより多くの資産へ「成長」させることを国もすすめています。
保険を活用した資産運用とは
資産運用には預貯金のほか、投資信託の購入、株式投資や不動産投資などさまざまな方法があります。
その一つに「生命保険を活用した資産運用」があります。
一般的に生命保険は、病気や死亡といった万が一の事態に備えるためのものというイメージが強いでしょう。
しかし近年では資産形成という側面にもクローズアップした商品が出ています。
生命保険の中には、保険料の一部を運用し、その運用益を保険金や解約返戻金に上乗せする仕組みを持った商品があります。
生命保険で資産運用をおこなう仕組み|保険の貯蓄性・投資性による違い
預けるお金の運用方法によって、生命保険には大きく分けて2タイプあります。
A 貯蓄性が高い保険 | B 投資性が高い保険 |
---|---|
・ 長期的に保険料を積み立て、満期時にまとまったお金を受け取れるタイプの保険 ・ 大きなリターンは望めないが、解約時の返戻金は基本的に元本を下回ることはない |
・ 保険料の一部を株式や債券など、さまざまな金融商品に投資し、運用成果に応じて保険金や解約返戻金が変動するタイプの保険 ・ 変額保険、外貨建て保険などがあり運用次第では大きなリターンが得られるが、元本は保証されてない |
生命保険と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、掛け捨てのものを除きAのタイプではないでしょうか。
貯蓄性が高い保険では、長期間保険料を払い込み続けることで、支払った保険料以上の解約返戻金が期待できます。
このタイプでは、満期時受け取るお金が支払った金額分を下回ることは基本的にありません。
ただし払い込んだ金額よりも受け取るお金が非常に大きく増えるわけではないため、定期預金に保険がついているような商品と考えればわかりやすいでしょう。
一方、Bは資産運用のための生命保険として投資性の高いタイプのものです。
こちらは被保険者が、支払った保険料の一部を運用することで、満期時や解約時に受け取れる金額を増やすことができます。
しかしBの場合は、当然投資としてのリスクがあります。
Aのタイプと異なり、運用の結果次第では解約返戻金が払い込んだ金額を下回ることもあります。
投資と保険の違い
あらためて、投資と保険の違いをまとめてみましょう。
区分 | 生命保険 | 投資 |
---|---|---|
目的 | 万が一の備え(+資産形成) | 資産形成 |
商品例 | 生命保険、医療保険など | 株式、債券、投資信託、不動産投資など |
リスク | 比較的低い(投資型保険を除く) | 比較的高い(日本国債などかなり低いものもある) |
税金に関する注意点 | 生命保険料控除がある | 利益に対して課税される |
この比較だけを見ると、「生命保険は貯蓄も備えも投資もできて、お得では?」と思う人もいるかもしれません。しかし生命保険にもメリットだけでなくデメリットもあります。
また同じ生命保険でも、契約者の属性や年齢によって、また何より目的によって合う・合わないがあることに注意が必要です。
貯蓄性が高い生命保険の種類
ここでは貯蓄性が高い生命保険を5つ紹介します。
1.終身保険
被保険者が死亡した場合や高度障害状態になった場合に保険金が支払われる生命保険です。
最大の特長は、満期が設定されていないため一生涯保障が受けられる点です。
長く払い込みを続けるほど解約返戻金が増えますが、短期間で解約すると元本割れを起こす可能性があります。
2.養老保険
終身保険と同様に死亡・高度障害状態になった場合の保険金に加え、一定期間(満期)まで生存していれば満期保険金を受け取れる生命保険です。
満期になるまでの保険期間は20年など年数で設定されているものと、60歳までなど年齢で設定されているものがあります。
死亡・生存どちらの状態でも満期時にまとまったお金を受け取ることができる点がメリットですが、その分、終身保険に比べて保険料が高額になる傾向があります。
また終身保険と同様、短期間で解約すると損失が大きくなる可能性があります。
3.学資保険
子どもの教育資金の準備を目的とした生命保険です。
被保険者は子どもで、親や祖父母などが契約者になり、積み立てることが一般的です。
子どもの高校や大学への進学時期に満期となるよう設定し、積み立ててきた金額を充てることができます。
死亡保障がついており、万が一保護者が死亡した場合でも、子どもの教育資金が用意されます。
しかし途中で解約すると、元本割れになる可能性があります。
また運用によるリターンなどはあまり期待できません。
以前は教育資金の積立といえば学資保険でしたが、現在は子育て世代において、投資と保険を分けるなど学資保険の加入率は減少傾向にあります。
4.個人年金保険
個人年金保険は、老後の生活資金の準備を目的とした私的年金です。
公的年金をカバーするものとしてさまざまな商品があります。
個人年金保険のうち、投資性の高いものとして「変額個人年金保険」があります。
5.低解約返戻金型終身保険
解約返戻金を少なくすることで、保険料を通常よりも安く抑えた終身保険です。
保険料が安いことがメリットですが、短期間のうちに途中解約した場合、解約返戻金がほとんど無かったり、元本割れになったりという可能性が非常に高くなります。
投資性が高い生命保険
投資性が高い生命保険のうち、ここでは代表的なものを2つ紹介します。
1.変額保険
変額保険は生命保険の一種で、保険料の一部を株式や債券などの金融商品に投資し、その運用実績に応じて保険金や解約返戻金が変動するタイプの保険です。
変額終身保険、変額個人年金保険などがあります。
死亡・高度障害などへの基本的な保障は通常の保険と同様に備えており、契約内容にある死亡保障など「基本保険金額」は変動しません。
支払われた保険料のうち、保険金や解約返戻金などを保証するための費用を除いた部分が運用され、さまざまな金融商品に投資されます。
運用成績によって、死亡保険金や解約返戻金などの金額が変動します。
運用が好調ならばこれらの金額が増える可能性がありますが、逆に運用が不調になってしまうと、減ってしまう可能性もあります。
なお、返戻金の最低保証はないことがほとんどです。
2.外貨建て保険
外貨建て保険とは、保険料を円ではなく、米ドルやユーロなどの外貨で支払う生命保険のことです。
保険金や解約返戻金も、契約時に選択した外貨で受け取ります。
一般的に、日本円よりも高金利で運用される外貨建ての金融商品が多いです。
そのため、円建て保険よりも高い運用利回りが期待できます。
円と外貨の交換レート(為替レート)が変動するため、為替の影響を受けることが大きな特徴です。
契約時に支払った保険料と、将来受け取る保険金や解約返戻金の金額が異なる場合があります。
逆に、為替相場が悪化すると元本割れになるというリスクがあります。
なお「生命保険」として、ほとんどの場合、死亡・高度障害における保険金は基本保険金額(最低保証)が設定されている点は変額保険と同じです。
これら以外にも投資性が高い生命保険や個人年金保険はありますが、多くが元本保証をしていない点が特徴です。
そのかわり、運用結果によっては大きなリターンを得られる可能性があります。
生命保険を活用した資産運用のメリット
生命保険による資産運用では、以下のようなメリットがあります。
1.万が一の備えになる
投資型の生命保険でも、基本機能である「保険」は当然付帯しており、安心を手に入れることができます。
万が一契約者になにかあったとき、仮に運用で損失が出ていたとしても、保険契約で決められている保障はそのまま受けられます。
2.リスクが比較的小さい
特に貯蓄性の高い生命保険は元本割れすることはほぼありません。
定められた期間以上を払い込みすると、満期または解約する際に払い込んだ金額は返戻されるため、リスクは小さいといえます。
投資性の高い生命保険は元本割れを起こすリスクがあります。
ただ商品によりますが、一般的な投資と比較すると元本割れの可能性は低いといえるでしょう。
3.節税効果がある
生命保険は、「生命保険料控除」という所得控除の対象です。
年末調整や確定申告の際に申告することで、所得税と住民税を軽減できます。
また、生命保険は相続税の非課税といった税制上の優遇措置が適用される場合もあります。
参考:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
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子どもにお金を残す方法!知っておくと便利な相続税対策と注意点を解説
4.貸付制度があり現金が必要な時も安心
多くの生命保険には、契約者が経済的に困った際に、契約内容に基づいて保険会社からお金を借りられる貸付制度があります。
緊急時にまとまった現金が必要になった場合にこの制度を利用することで、解約による元本割れを防ぐことができます。
なお、以下の点には注意が必要です。
・ 基本的に借りられる金額は解約返還金の一定範囲内である
・ 払い込んだ保険料以上の金額は借りられない
・ 払い込み期間が短い場合はこの制度が使えないケースもある
・ 貸付金に一定の金利がかかる
生命保険を活用した資産運用のデメリット
生命保険による資産運用のデメリットには以下のものがあります。
1.元本割れがある
特に投資性の高い生命保険の場合、市場の状況によっては元本割れになってしまう可能性があります。
変額保険などは、運用成績によって保険金や解約返戻金が変動するため注意が必要です。
貯蓄性の高い生命保険では、払い込んだ金額分は保証されていることがほとんどなので、定められた期間を払い込めば元本割れはほぼありません。
2.リターンは他の投資と比較すると低い傾向になる
保険と資産運用を兼ねていることから利便性とメリットに目が向きがちですが、投資商品としてのリターンは一般的な投資方法と比較すると低くなります。
資産を増やすことが主な目的の場合、生命保険を中心に考えることは避けたほうがよいでしょう。
3.短期間での途中解約は不利になる
生命保険は、長期的な積み立てを前提とした商品です。
考え方としては積立投資信託に近く、長期間運用してこそ、その特徴を生かせます。
生命保険も、短期間で途中解約をするなど加入期間が短い場合、返戻金が元本割れする可能性があります。
契約前に保険会社の説明をよく聞き、何年以上の加入で元本が保障されるのか確認しておきましょう。
そのうえで、それだけの期間、毎月保険料を払い続けることができるのか、ライフプランを立てて見極める必要があります。
保険と投資を分けて考える方法もある|自分の目的と状況を把握して決めよう
ここまで見てきて、「投資性の高い生命保険なら、一つで万が一の備えも貯蓄も投資もできて一石三鳥」と考えた人もいるでしょう。
しかし、生命保険はあくまでも「保険」です。
保険は万が一のための備えという側面がもっとも大きいといえます。
たとえば小さなお子さんがいる働き盛りの世代で、夫が一家の収入の柱を担っているならば、夫に何かあった場合に備えて生命保険に加入するケースは多いでしょう。
このとき、できれば貯蓄も一緒にできるものをと考えるかもしれません。
その場合、投資性の高い生命保険にすると、満期返戻金や解約返戻金が元本割れしたり、商品によっては最低金額も保証されていなかったりすることもあり、大きな損失を出してしまうおそれがあります。
また生命保険は、前述のとおり長期間(ほとんどの場合10年以上)積み立てることでそのメリットを発揮できます。
長期間、毎月定額のお金を積立てられるのか、その間そのお金を引き出せなくなるけれど問題ないか、などを事前に考えなければなりません。
あくまでも個々の状況によりますが、「生命保険」に「貯蓄」や「投資」も組み合わせるのではなく、「保険」「貯蓄」「投資」を分けておこなうことで、自分の状況に合わせて支出を抑えたり、余裕のあるときに投資額を増やしたりすることがしやすくなるかもしれません。
これらをよく考え、生命保険を資産運用に用いるかを決めましょう。
保険に加入する際は保険会社の説明や書面をしっかり確認し、自分の投資スタイルやライフプランに合っているか熟考したうえで、資産運用の一助とするとよいでしょう。
資産運用を始める際の基本・注意点
資産運用は、将来の生活をより豊かにするための大切な手段です。
しかし、始める前にしっかりと理解しておきたい基本的な考え方や注意点があります。
ここでは生命保険に限らず、資産運用を始める場合の基本の認識や注意点について、あらためて解説します。
1.なぜ資産運用するのか?「目的」と「目標」を明確にする
資産運用を始める前に、まず「なぜ資産運用をしたいのか」という自分の目的を明確にすることが大切です。
たとえば、資産運用をしようかな…と考えるきっかけは、以下のようなものが目的になるときが多いのではないでしょうか。
・ 老後資金の準備:定年後の生活費を確保したい
・ 子どもの教育資金の準備:子どもの進学費用を捻出したい
・ マイホーム購入資金の準備:住宅購入のための資金を貯めたい
・ 資産を増やしたい:純粋にお金を増やして、将来への漠然とした不安をなくしたり、夢のために使ったりしたい
目的によって、選ぶべき金融商品や投資期間などが変わってきます。
また目的を明確にすることで、自分の現状(年齢や年収など)と合わせてどんな商品なら投資が可能かも見えてきます。
さらに、具体的な目標額や達成したい時期を設定することで、モチベーションを維持し、計画的な資産運用を進めることができます。
2.生活資金を除いた余剰資金で少額から始める
資産運用は、生活に支障が出ない範囲でおこなうことが基本であり最も重要です。
投資には多かれ少なかれリスクがともなうため、生活費をつぎ込んでまでおこなうことは本末転倒です。
生活費を確保したうえで、余っているお金、余裕のある金額で始めるようにしましょう。
また、いきなり大きな金額を投資するのではなく、少額から始めることをおすすめします。
少額から始め、投資の仕組みを学びながら、自分自身の知識の成長とともに徐々に金額を増やしましょう。
こうすることでリスクを抑えることができます。
3.リスク分散を意識する
一つの金融商品に全額投資してしまうと、その商品が値下がりした際に大きな損失を被ってしまうおそれがあります。
そのため、資産運用では複数の金融商品に分散投資することが重要であり、基本です。
資産運用で用いられる方法には、それぞれリスクとリターンに特徴があります。
たとえば、代表的なものは以下のようになります。
株式 | ある程度高めのリターンが期待できる一方で、変動が大きい |
---|---|
債券 | どの国などを選ぶかでリスクは異なるが、日本国債の場合はリスクが低く、安定した収益が期待できる 株式などと比較するとリターンは低い |
投資信託 | 複数の金融商品に分散投資できるセット商品 どの銘柄をどの割合で組み合わせているかでリスクとリターンの割合は異なる |
不動産投資 | 現物不動産投資は物価上昇(インフレ)に強い。税金対策にも有効 ただし管理運営など手間がかかるほか、現物不動産ならではのリスクがあるため中~上級者向け |
それぞれの金融商品の特徴を理解し、自分のリスク許容度や投資できる金額、経験値に合わせてバランスよく組み合わせていきましょう。
4.資産運用や投資について継続的に情報収集し学ぶ
資産運用は、一度始めたらそれで終わりではなく、継続的に学んでいくこと、見直していくことが大切です。
市場は日々変化します。
国内外の経済状況や金融市場の動きを把握するほか、投資に関する書籍などを読んだり、投資セミナーに参加して専門家から話を聞いたりすることも大切です。
新しい金融商品の登場などにも常にアンテナを張って情報を収集しましょう。
そのうえで、自分の投資状況、資産状況も定期的に把握しましょう。状況の変化によっては、方針を見直すことも検討してみてください。
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この記事では、生命保険を活用した資産運用について、それぞれの保険の種類、生命保険で資産運用するメリットとデメリット、資産運用をおこなう際の注意点などについて解説しました。
生命保険を活用した資産運用は、保障と資産形成を両立できる点が魅力です。
しかし、元本割れのリスクなどデメリットも存在します。
契約前に保険会社から十分に説明を受け、自分のライフプランやリスク許容度に合わせて商品を選ぶことが大切です。
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