不動産小口化商品のリスクは?投資前に知っておくべきことは
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目次

  1. 不動産小口化商品とは?
  2. 不動産小口化商品における3つのリスク
  3. 不動産小口化商品でリスクを抑えるためのポイント3つ
  4. 不動産小口化商品と別の投資という「分散」も検討しよう
  5. 不動産小口化商品がおすすめの人は?
  6. まとめ

不動産小口化商品は、少額で不動産投資をしたい人や相続税の税金を抑えたい人、将来の遺産分割を円滑に進めたい人におすすめの投資商品です。

現物の不動産を所有するのと比較すると、管理の手間がかからないことも特徴です。ほったらかしで資産運用ができるわけです。

ただし、不動産小口化商品に限らず、どんな投資対象にもリスクがあるので、リスクの内容を事前に知っておくことが大切です。

損失リスクを知っておけば、投資ポートフォリオにおいて不動産小口化商品に充てる投資資金の比率をどの程度にするか、検討しやすくなります。

この記事では、不動産小口化商品の仕組みや種類といった基礎知識を解説した上で、不動産小口化商品のリスクや、リスクを抑えるためのポイントなどについて説明します。

不動産小口化商品とは?

不動産小口化商品とは、不動産を小口にして販売する投資商品のことです。対象の不動産は、単独の不動産もあれば、複数の不動産もあります。

不動産小口化商品は「不動産特定共同事業法」(不特法)という法律に基づいて運営されます。

不動産特定共同事業法は1994年に国会で成立、1995年に施行された法律で、投資家が不測の被害を被ることがないように、不動産特定共同事業の健全性の維持を目的として制定されました。

不動産特定共同事業法の全文は「不動産特定共同事業法|e-Gov」で確認することができます。ちなみに、法律の第一条(目的)は以下のようになっています。

「不動産特定共同事業を営む者について許可等の制度を実施して、その業務の遂行に当たっての責務等を明らかにし、及び事業参加者が受けることのある損害を防止するため必要な措置を講ずることにより、その業務の適正な運営を確保し、もって事業参加者の利益の保護を図るとともに、不動産特定共同事業の健全な発達に寄与することを目的とする」

不動産小口化商品の仕組み

マンションやオフィスビルなどは物理的に分割することができませんが、不動産小口化商品では1口数万〜100万円ほどの金額で投資家に不動産小口化商品を買ってもらい、投資家に家賃収入や売却益が分配される仕組みになっています。

後述しますが、不動産小口化商品にはいくつかの種類があり、その種類によって所有権の有無や運営主体、収益の税務上の扱い、減価償却の可否などが異なります。

所有権を得られる不動産小口化商品の場合は、相続税の節税につながります。不動産の相続税評価額は、現金よりも低く算出されることが期待できるからです。また、減価償却によって所得税を節税することも可能です。

不動産小口化商品の種類

不動産小口化商品は「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸型」に分類できます。3種類の特徴を表にまとめると、以下のようになります。

種類 所有権 収益の税務上の扱い 減価償却 投資スパン
匿名組合型 なし 雑所得 できない 短期可(数ヵ月〜)
任意組合型 あり 不動産所得 できる 基本長期(10年程度)
賃貸型 あり 不動産所得 できる 基本長期(10年程度)
  • 匿名組合型
    匿名組合型では、投資家は匿名組合の事業者と匿名組合契約を結び、出資します。その出資金で運用する不動産から発生した家賃や売却益が、投資家に分配される仕組みです。

匿名型組合で投資家が得られる収益は、税務上「雑所得」と扱われます。不動産の所有者にはなれず、所得税の節税につながる減価償却の仕組みを使うことはできません。

1口数万〜10万円程度のものが多く、投資期間は数ヵ月〜10年程度と、他の2つに比べて短期投資が可能であることも特徴です。

  • 任意組合型
    任意組合型では、事業者と投資家が任意組合契約を締結し、共同で不動産事業を展開します。出資方式には「現物出資」と「金銭出資」がありますが、いずれの場合も不動産の所有者になれます。

不動産運用から発生した家賃や売却益が投資家に分配され、その収益は税務上「不動産所得」として扱われます。

減価償却の仕組みを利用できるため、所得税の節税につながります。1口100万円以上のものが多く、長期投資として取り組むことになります。

  • 賃貸型
    賃貸型では、出資額に応じて不動産の持ち分が決まります。すなわち、不動産の所有者となることができます。

その不動産の運用を行う事業者と賃貸借契約を結び、運用で発生した家賃や売却益は持ち分に応じて投資家に分配されます。

分配された収益は税務上「不動産所得」として扱われ、減価償却が可能です。1口100万円程度のものが多く、基本的には長期投資となります。

不動産小口化商品における3つのリスク

続いて、不動産小口化商品におけるリスクについて解説します。

不動産小口化商品は、運用する不動産からの収益によってリターンを得られるため、不動産投資の一種と考えることができます。そのため、不動産投資で注意しなければならないリスクの一部は、不動産小口化商品にも当てはまります。

不動産小口化商品における3つのリスク
1.常に空室リスクがある
2.急な資金ニーズに対応しにくい
3.運営事業者の倒産によるリスク

1.常に空室リスクがある

不動産投資においてまず考えられるリスクに、「空室リスク」があります。

マンションであれ、オフィスビルであれ、商業施設であれ、空室が出るとその分家賃収入が減ります。家賃収入が減ると、投資家への分配金の原資も減ります。

2.急な資金ニーズに対応しにくい

不動産小口化商品は商品ごとに運用期間が定められており、原則的に運用期間が終了するまで中途解約をせずに投資を続ける必要があります。

中途解約をせざるを得なくなった場合は、かなり低めの価格での買取となったり、大きな手数料が発生したりします。

簡単に中途解約ができないということは、急な資金ニーズに対応しにくいということです。

投資の世界では「現金化のしやすさ」を「流動性」と呼びます。株式や投資信託、外貨などは流動性が高めですが、不動産小口化商品は低めです。

3.運営事業者の倒産によるリスク

投資対象の不動産を運営する事業者が倒産した場合は、投資を継続できなくなることがあります。

こうした場合、不動産を売却してその資金を投資家に分配することになっても、売却がうまくいかなかったり、売却を急ぐあまり大きな売却損が発生したりするおそれがあります。

不動産小口化商品でリスクを抑えるためのポイント3つ

「空室リスク」は、不動産小口化商品の選び方によって大幅に抑えることができます。

具体的には、立地条件の確認や物件の見学、対象物件の用途などのチェックを通じて、リスクが低めの商品を選ぶことになります。

不動産小口化商品でリスクを抑えるためのポイント3つ
1.「立地条件」を確認してリスクを減らす
2.「物件」を見学してリスクを減らす
3.「対象物件の用途」でリスクを確認

1.「立地条件」を確認してリスクを減らす

不動産小口化商品の投資対象は、住居向けやオフィス向け、商業施設向け、宿泊施設向けなど、それぞれに用途があります。

どのような用途であっても立地条件が良いに越したことはないのですが、特に重視すべきポイントは変わります。

例えば、住居向けの場合はスーパーや病院、郵便局などの生活利便施設が近くにあるか、オフィス向けの場合は街のブランドイメージが企業イメージを損なわないか、商業施設向けの場合は近くに競合する施設がないか、宿泊施設向けの場合はそのエリアのインバウンド観光が今後活発化するか、といったポイントがあります。

2.「物件」を見学してリスクを減らす

不動産小口化商品によっては、実際に投資する建物などを案内する見学ツアーなどが実施されるものもあります。パンフレットで投資対象の不動産を見るのと、実際に自分の目で見るのとでは、印象がかなり違うことがあるため、物件の見学ツアーには積極的に参加しましょう。

3.「対象物件の用途」でリスクを確認

先ほど、立地条件を確認するポイントは用途ごとに異なると説明しましたが、用途によってリターンやリスク、収益の安定性などの特徴も変わります。

リターンの面では、住居向けの場合は「住む」というニーズは景気が良くても悪くても変わらないため、収益が安定しやすいという傾向があります。

商業施設向けの不動産は住居向けやオフィス向けよりも家賃が高めなので、高い収益性を期待できます。オフィス向けは、これらの中間をイメージしてください。

それぞれのリスクやデメリットとしては、住居向けはリターンが商業施設向けやオフィス向けよりも低めであることや、商業施設向けは景気が悪い時は賃料を上げにくいことなどが挙げられます。

オフィス向け不動産では1フロアのすべてを借りる企業も多く、そうした企業が退去することになると、一気に家賃収入が減ることなどが挙げられます。

不動産小口化商品と別の投資という「分散」も検討しよう

不動産小口化商品に投資する場合でも「分散投資」という視点を持ち、リターンの安定化に努めるべきです。

不動産小口化商品に限らず、分散投資は投資の基本です。例えば不動産市況が悪化して、不動産小口化商品への投資で売却差損が出る状況でも、他の資産運用で好調であれば損失を最低限に留めることができます。

分散投資には「資産の分散」「地域の分散」「時間の分散」があります。

資産の分散は「不動産小口化商品+株式投資」というように投資対象となる資産を分散すること、地域の分散は「アメリカへの投資+日本への投資」というように投資対象エリアを分散すること、時間の分散は一度にすべての資金を投資せず、積立型などで投資を行う方法を指します。

ここでは、「資産の分散」に取り組むための一般的な投資方法を4つ紹介します。

「資産の分散」に取り組むための一般的な投資方法4つ
1.株式投資
2.投資信託
3.債券投資
4.外貨預金

1.株式投資

株式投資は、自ら個別株を選んで保有する投資手法です。その株式の売買によって得られる売却益と、保有している間に得られる配当金や株主優待がリターンとなります。

個別株の値動きは、ある程度時価総額が大きい銘柄であっても、かなり荒いです。1日で株価が20%高となることもあれば、20%安となることもあります。

日本には「ストップ高」「ストップ安」といった仕組みがありますが、アメリカにはそのような値幅制限がなく、1日で株価が2倍になったり、2分の1になったりすることもあります。

ただし、保有する銘柄の数を増やし、保有銘柄の業種も分散させることで、リスクを抑えることができます。

2.投資信託

投資信託は、一定の運用方針の下で運用されるファンドに投資を行う投資商品です。

さまざまなタイプの投資信託があり、「インデックス型の投資信託」「テーマ型の投資信託」「アクティブ型の投資信託」「バランス型」などがあります。

インデックス型の投資信託は、「日経平均株価」や「S&P500」など代表的な株価指数に連動する成果を目指す投資信託です。

株価指数はさまざまな株式銘柄で構成されていることから、インデックス型の投資信託は分散性が非常に高く、ボラティリティ(変動幅)も低めです。

3.債券投資

債券投資は大きく分けて2種類あります。新規に発行される新発債を購入して満期日まで保有する方法と、既発債を購入して債券価格の値動きで売却益などを狙う方法です。

前者は発行元が破綻しない限り元本が保証され、保有中は利子を受け取ることができます。

一般的に国が発行する「国債」が最も信頼度が高いです。後者は、株式投資のように値上がりを待って売却し、売却益を狙います。リスクは後者のほうが高めです。

4.外貨預金

外貨預金は円を外貨にして預金することで、円預金より高い利息を得る投資手法です。低金利の日本では預金で得られる利息はごくわずかですが、金利が高い国の通貨で預金をすると利息収益は大きくなります。

外貨預金のメジャーな通貨としては、米ドルやユーロ、豪ドル、トルコリラなどが挙げられます。外貨預金は続ける限り安定的に利息収入を得られますが、為替の変動によって含み損が発生するリスクが常に伴います。

例えば、年間2%の利息を得られる通貨で外貨預金に取り組むとします。

1,000万円をその外貨にして1年間保有すると20万円の利息を得られますが、その外貨の価値が5%下落すると50万円の含み損が発生し、トータルでの資産が減ったことになります。

不動産小口化商品がおすすめの人は?

最後に、不動産小口化商品に投資するのがおすすめの人を3タイプ挙げます。

不動産小口化商品に投資するのがおすすめの人3つのタイプ
1.少額から不動産投資をしたい人
2.相続税の評価額を抑えたい人
3.将来の遺産分割を円滑に進めたい人

1.少額から不動産投資をしたい人

少額から不動産投資を始めたい人は、不動産小口化商品がおすすめです。

都市部のマンションや商業施設、オフィスビルなどは、かなりの資産を保有していなければ購入することができません。一方、不動産小口化商品であれば100万円程度で不動産の所有権を得られます。

2.相続税の評価額を抑えたい人

不動産小口化商品の中で「任意組合型」と「賃貸型」では、不動産の所有権を保有できることを説明しました。

この2タイプの不動産小口化商品では、相続の際にその資産が不動産と扱われるため、現金で保有しているよりも相続税評価額が圧縮され、相続税の節税につながります。

3.将来の遺産分割を円滑に進めたい人

マンションやオフィスビルなどの不動産は、物理的に分割することができません。そのため、相続の際の遺産分割がスムーズに進まないことがあります。

その場合は、建物を売却して現金化するなどの方法を採ることになり、面倒です。

一方で不動産小口化商品であれば、30口保有している場合は子ども3人で10口ずつ相続すれば済むので簡単です。

まとめ

資産運用ではどんな投資対象であっても、リスクを考慮することが大切です。

リスクの最大値を見積もり、その損失に耐えられないようなら、投資する金額を減らすか、他の資産を組み合わせて全体でリスクを抑えるといった工夫が必要です。

ただし、リスクがあるからといって資産運用をしないことは「機会損失」につながるため、やめましょう。

1,000万円を10年間眠らせても1,000万円のままですが、年間5%のリターンを得られる資産で10年間運用すると10年間で計500万円の収益が出て、資産は1,500万円に膨らみます。

不動産小口化商品のリスクを知りつつ、不動産小口化商品があなたに合っている投資商品であれば、今すぐ投資を検討しましょう。

岡本一道
岡本一道(著者)
日本の国内メディアと海外メディアの両方でのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会・文化など幅広いジャンルにおけるトピックスで多数の解説記事やコラムを執筆。ニュースメディアのコンサルティングなども手掛ける。