ヘッジファンドで500万円を運用する方法と投資信託との違いを解説
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金融投資をする際によく聞くのがヘッジファンドという言葉です。

ヘッジファンドとはどのような存在なのでしょうか。本記事では、ヘッジファンドの概要と、500万円を運用する方法や投資信託との違いについて見ていきます。

この記事でわかること
  • ヘッジファンドに関する基本的な知識
  • ヘッジファンドと投資信託の違い
  • ヘッジファンドの投資戦略

目次

  1. ヘッジファンドとは?特別な投資戦略を用いて高い利回り目指すファンド
  2. 60歳からヘッジファンドで500万円を運用した場合
  3. ヘッジファンドの投資戦略5選
  4. ヘッジファンドと投資信託はどう違う?
  5. ヘッジファンドを利用するメリット3つ
  6. ヘッジファンドを利用するデメリット3つ
  7. ヘッジファンドを利用するときにかかる費用
  8. ヘッジファンドを組み入れたポートフォリオ

ヘッジファンドとは?特別な投資戦略を用いて高い利回り目指すファンド

ヘッジファンドとは
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ヘッジファンドとは、特別な投資戦略を用いて高い利回りを目指す、富裕層向けの投資ファンドです。

ヘッジファンドはその名のとおり、あらゆるリスクを避けながら、「絶対利益」を追求する投資方針で運用されています。

絶対利益とは、市場が上昇しているときも下落しているときも利益を得ることをいいます。下落時は株式の空売りなどの手法で利益を追求します。

60歳からヘッジファンドで500万円を運用した場合

ヘッジファンドとは
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60歳から資産運用するには500万円はちょうど良い金額です。

正社員として勤務した場合、60歳や65歳で定年を迎え、退職金を受け取る人が多いでしょう。老後の生活を豊かにするためには公的年金だけでは難しく、ほかに何らかの収入が必要です。

退職金をすべて投資に充てるのは不安がありますが、かといって100万円以下の少額を高利回りで運用してもそれほど大きな資産の増加は期待できません。

退職金の一部を使って500万円で運用すれば、下記シミュレーションのように大きな資産の増加を得られます。

ただし、年利5%平均で安定して運用するには、相場が下落したときに損失をカバーできる投資方法が理想です。その目的に適した商品がヘッジファンドです。

ヘッジファンドは富裕層向けの商品なので、投資するハードルは高いですが、最低預入金額が500万円から扱うヘッジファンドもあるので、検討すると良いでしょう。

ヘッジファンドで500万円を運用するシミュレーション

ヘッジファンドを利用して年利5%平均で複利運用(1年複利)した場合、どのように資産が増えていくのかシミュレーションしてみましょう。

ヘッジファンドを利用して年利5%平均で複利運用(1年複利)した場合

1年目5,250,000円11年目8,551,697円
2年目5,512,500円12年目8,979,282円
3年目5,788,125円13年目9,428,246円
4年目6,077,531円14年目9,899,658円
5年目6,381,408円15年目10,394,641円
6年目6,700,478円16年目10,914,373円
7年目7,035,502円17年目11,460,092円
8年目7,387,277円18年目12,033,096円
9年目7,756,641円19年目12,634,751円
10年目8,144,473円20年目13,266,489円

500万円で運用を始めて15年後には残高が2倍の1,000万円を超えます。

実際には5%を下回る年と超える年があるため、上表と同じ数字にはなりませんが、平均して5%で複利運用する効果の大きさがわかるでしょう。

60歳で資産運用を始めれば15年後は残高1,000万円に

60歳から資産運用始めれば、15年後の75歳のときに残高が1,000万円に達します。その時点で解約して老後資金として使うのも良いですし、さらに運用を続けて増やす選択肢もあります。

ただし、NISA(少額投資非課税制度)を利用できない場合は20.315%(復興特別所得税含む)の所得税が源泉徴収されるため、5%の手取りを達成するには6.3%程度の利回りで運用する必要があります。

また、管理手数料や成功報酬の支払いが発生するため、実質的な手取り額はさらに減少します。あくまで増え方の目安としてご覧ください。

ヘッジファンドの投資戦略5選

ヘッジファンドはどのような投資戦略を立てて運用しているのでしょうか。代表的な投資戦略として以下の5つの方法が挙げられます。

1. ロング・ショート投資|割安な株を長期保有する投資戦略

ロング・ショート投資とは、将来値上がりが期待できる割安な株を長期(ロング)で保有し、値下がりの可能性が高い割高な株を空売り(ショート)する投資方法です。

相場の方向性を見極めて投資する戦略で、日本のヘッジファンドで最も多く採用されているスタンダードな投資戦略といえます。

2.マーケット・ニュートラル投資|安定的な運用を目指す投資戦略

マーケット・ニュートラル投資とは、ロングとショートを同じ程度の比率で組み合わせて、相場に左右されない安定的な運用を目指す投資方法です。

たとえば、本来の株式価値よりも割安な銘柄を買い、割高な銘柄を空売りします。その後両銘柄の株価が正常な水準に戻ったときに利益が出る仕組みです。

3.バリュー投資|本来の企業価値よりも大幅に割安な株式を買う投資戦略

バリュー投資とは、本来の企業価値よりも大幅に割安な株式を買う投資方法です。

世界的な投資家であるウォーレン・バフェットが好んでおこなっていることから、近年注目が高まっています。

株価が割安なことから値下がりするリスクが低く、上昇余地が高いことから、ヘッジファンドに向いている投資先といえます。

4. イベント・ドリブン投資|投資機会を逃がさず収益の最大化を図る投資戦略

イベント・ドリブン投資とは、M&A(企業の合併・買収)、TOB(株式公開買付け)、MBO(自社の株式や事業部門を買収すること)などの企業イベントがあった際に、投資機会を逃がさず収益の最大化を図る投資方法です。

実際にM&AやTOBが入ると、買収される側の会社の株価が急騰するケースがよく見られます。

5. アクティビスト投資|株主総会で企業側に利益還元を働きかける投資方法

アクティビスト投資とは、ヘッジファンドがアクティビスト(モノいう株主)として、株主総会で企業側に利益還元を働きかける投資方法です。

一定数以上の株数を保有し、具体的に経営戦略を提案することで、企業と株主双方の利益最大化を目指すのが特徴です。

ヘッジファンドと投資信託はどう違う?

ヘッジファンドとは
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ヘッジファンドと投資信託はプロに資産運用を任せる点では同じですが、以下のような違いもあります。

投資手法の違い

・投資信託の投資手法
投資信託は、株式や債券など伝統的な投資商品を組み入れて運用することを基本にしています。誰でも比較的判断しやすい商品が中心です。

・ヘッジファンドの投資手法
一方のヘッジファンドは、伝統的な商品だけでなく、先物取引、オプション取引、スワップ取引などオルタナティブな商品も組み入れて運用します。

ある程度の金融知識がないと理解が難しい商品が多いです。

また、ヘッジファンドは空売りの手法を使いますが、一般的な投資信託は空売りによる運用は行っていません。ヘッジファンドのほうが運用の自由度が高いといえます。

公募と私募の違い

・投資信託は誰でも投資できる(公募)
投資信託は誰でも投資できる「公募」の形をとっており、証券会社だけでなく銀行でも購入することができます。

・ヘッジファンドは限られた投資家から出資を受ける(私募)
これに対し、ヘッジファンドは限られた投資家から出資を受ける「私募」という形のクローズドなファンドのため、各社が設定した条件を満たさないと利用することができません。

500万円を運用するために利用するなら、その金額で受け入れてくれるファンドを探す必要があります。

投資家層の違い

・投資信託は100円から積み立て投資が可能
投資信託は100円から積み立て投資が可能で、新NISAをきっかけに投資を始めた初心者や、少額投資家に向いています。

また、投資信託が不特定多数の投資家を相手に薄く広く信託報酬を稼ぐのが目的です。

・ヘッジファンドは最低預入金額が高額
これに対しヘッジファンドは最低預入金額が高額なことから、富裕層の投資家が中心に投資しています。

また、ヘッジファンドは限られた個人投資家や機関投資を顧客に持って、1顧客当たり多額の成功報酬を得るという違いがあります。

ヘッジファンドを利用するメリット3つ

ヘッジファンドとは
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ヘッジファンドは以下の3つのメリットがあるので、自分で運用するよりも低いリスクで高いパフォーマンスが期待できます。

1. プロに運用を任せることで安心感がある

ヘッジファンドは投資のプロであるファンドマネージャーに運用を任せます。

プロが運用するので大きく崩れる可能性は低く、後述しますが相場が下落した局面でも利益が出るよう運用をします。

投資は運用する金額が多いほど、損失リスクも大きくなります。たとえば、100万円の投資で10%のマイナスなら10万円の損失ですが、1億円の投資で10%マイナスになれば実に1,000万円の巨額な損失となります。

ヘッジファンドは上昇局面でも下落局面でも利益が出るように設計しているので、暴落時も大きな損失が発生する心配はありません。そのため資産家ほどヘッジファンドの運用が適しているのです。

2. 高利回りが期待できる

ヘッジファンドは投資信託など一般的な投資に比べると、高い利回りが期待できます。

ヘッジファンドの運用成績は非公開の会社が多いですが、ネット上の情報をまとめると年利10%以上が一般的な運用目標のようです。

結果的に10%を超えている会社もあり、運用成績はファンドによって差があります。

また、過去の運用パフォーマンスについて、面談時に営業担当者から直接説明するとしている会社もあるので、完全に非公開とは限りません。

3. 下落局面でも利益が出る

投資は一般的に購入した価格より値上がりした場合に利益が発生します。

そのため相場が下落したときは損失を被る可能性が高くなります。値下がりすることが投資の最も大きなリスクです。

その点ヘッジファンドは、空売りの手法も使うため、相場が下落したときでも利益を出すことができます。

空売りは値下がりが予想される株式を証券会社から借りて売買する信用取引の手法の1つです。空売りした株が値下がりしたところで安く買い戻すことで差額が利益になります。

したがって、値上がりすることで資産が増加する投資信託に比べて、利益獲得の機会が多いというメリットがあります。

ヘッジファンドを利用するデメリット3つ

ヘッジファンドとは
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運用利回りが高いとされるヘッジファンドですが、利用するには以下のようなデメリットもあります。

1. 富裕層でないと投資できない

ヘッジファンドは、詳しくは後述しますが最低預入金額の基準が高いため、富裕層でないと投資できないのがデメリットといえます。

ヘッジファンドは余裕資金を運用することが前提で、やたらと解約できないため、資金に余裕のない方ははじめから対象外になっています。

2. 運用成績が非公開の会社が多い

ヘッジファンドは目論見書の交付や運用レポートを発表している投資信託と違い、運用成績は非公開の会社が多いです。

そのため、運用会社がどの程度の利益を出しているかわからない場合があるのがデメリットです。

これは先に紹介したように、投資信託が誰でも購入できる「公募」であるのに対し、ヘッジファンドは限られた投資家を対象にした「私募」であることから、情報開示が厳しくないことが原因と考えられます。

3. 現金化に時間がかかる

ヘッジファンドは、現物株や投資信託と比べると現金化するまでに時間がかかります。

株式や投資信託であれば売却して数営業日後に売却代金が指定する口座に入金されますが、ヘッジファンドは四半期に一度しか解約できないなどの条件が付いている場合があります。

したがって、ヘッジファンドには余裕のある資金を預けることが大事です。

ヘッジファンドを利用するときにかかる費用

ヘッジファンドとは
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ヘッジファンドを利用するには最低預入金額と一定のコストが必要です。

500万円で利用するのはハードルが高いですが、扱っているファンドや代替手段としての商品があります。

最低預入金額は?

ヘッジファンドを始めるには、運用会社ごとに最低預入金額が決まっています。多くの会社が1,000万円に設定しているので、誰でも始められるものではありません。

500万円から利用できるヘッジファンドは少数で、一例として以下の3社が挙げられます。

ファンド名投資対象最低預入金額
ハイクア・インターナショナル企業社員権500万円
BMキャピタル日本株1,000万円(1,000万円未満は職員と要相談)
オリエントマネジメント中国株1,000万円(1,000万円未満は職員と要相談)

ハイクア・インターナショナルは500万円から投資できます。

同社はベトナム現地法人サクコ社に事業融資を実施する日本国内法人・合同会社です。投資対象は同社の社員権となります。

やや特殊な投資といえますが、年利12%で年に4回3%ずつ分配金が支払われるのは魅力的です。

BMキャピタルとオリエントマネジメントの2社は、公式サイトから申し込む際に希望出資額を入力することができます。

ただし、職員と相談して可否が決定されるので、500万円で投資できると確定しているわけではありません。

証券会社で購入する場合の費用は?

ヘッジファンドを証券会社で購入することはできるのでしょうか。

ヘッジファンドを専門に販売するヘッジファンド証券で購入可能ですが、こちらは最低預入金額が1,000万円なので、500万円で購入することはできません。

先に紹介したBMキャピタルやオリエントマネジメントと面談して500万円では購入を受け付けてくれなかった場合、証券会社が販売しているヘッジファンドタイプの投資信託に投資する方法があります。

たとえば、野村アセットマネジメントが運用する「ノムラ・グローバル・トレンド(バスケット通貨選択型)資源国通貨コース(年2回決算型)」は、特殊型(絶対収益追求型)と呼ばれるヘッジファンドタイプの商品です。

相場が上がっても下がっても収益を得る絶対収益追求型のため、直近1年の騰落率が30.3%(2024年3月29日現在)とヘッジファンドタイプらしい高収益を挙げています(期間によって騰落率は異なります)。

1単位当たりの基準価額は1万9,535円(2024年4月18日現在)です。500万円の資金があれば250単位程度購入できる計算ですが、売り物がなければ一度に購入できない可能性があります。

手数料と成功報酬はどれくらい?

ヘッジファンドに運用を委託するには、一定の管理手数料と成功報酬が必要です。管理手数料は、年1回運用残高に応じてかかります。料率は2%程度です。

成功報酬は、運用の結果利益が出た場合のみかかる費用です。相場は20%程度といわれています。

高い料率ですが、投資家に利益が多く出るほどファンドマネージャーの収入も増えるため、より利益が上がるように努力してくれるというメリットがあります。

成功報酬が高いと感じる人は、ヘッジファンドの利用は避けたほうが無難でしょう。

ヘッジファンドを組み入れたポートフォリオ

ヘッジファンドとは
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ここまでヘッジファンドについて詳しく見てきました。ヘッジファンドは500万円でも投資は可能ですが、ファンドを選択する範囲がかなり限定されてしまうという問題点があります。

紹介したファンドやヘッジファンドタイプの投資信託で500万円を運用するのも良いですが、資金に余裕があるなら最低預入金額1,000万円のファンドに選択肢を広げるのも1つの方法です。

資産運用の基本は分散投資と長期投資です。そのためにはきちんとポートフォリオを組んで運用する必要があります。

自分で運用する株式や債券のほかに、ヘッジファンドをポートフォリオに組み入れることによって、運用成績の安定とさらなる向上が期待できます。

手数料や成功報酬は高いですが、老後の生活資金を少しでも増やすにはヘッジファンドは有力な投資先といえます。

※記事中のシミュレーションは一例であり、結果を保証するものではありません。また、記事中で紹介したヘッジファンドや投資信託への投資を検討する際は、公式サイトで詳細を確認し、ご自身でご判断ください。

丸山優太郎
丸山優太郎(著者)
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。企業系サイトを中心に執筆し、得意執筆領域は金融・経済・不動産。市場分析や経済情勢に合わせたトレンド記事を、毎年約200本執筆している。主な掲載媒体は「YANUSY」「THE Roots」「Dear Reicious Online」「auじぶん銀行お金のコラム集」「ZUUonline」など。