夫婦間の贈与がバレる理由は?罰則や贈与税の回避方法をわかりやすく解説
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「夫婦間なら贈与をしてもバレるわけがない」と思い込んでいる人もいらっしゃるのではないでしょうか。

少額の現金や生活費を夫婦間で移動させても問題ありませんが、まとまった金額や目的が曖昧な資産移動だと、税務署から贈与税の申告を指摘される可能性があります。

本記事では、夫婦間の贈与がバレる理由や、バレた場合の罰則、税務署から贈与を指摘されないための対策などをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 税務署は情報収集や調査において強い権限を持っている
  • 夫婦間での贈与はバレる可能性が高い
  • 非課税制度を利用し夫婦間での贈与をおこなうのがベスト

目次

  1. 夫婦間の贈与がバレる理由は税務署の強力な権限
  2. 夫婦間の贈与がバレる典型的な3つのケース例
  3. 夫婦間の贈与税の過少申告・末申告がバレる場合の罰則について解説
  4. 夫婦間の贈与税の回避方法|基礎控除や非課税の特例を利用する
  5. 夫婦間の贈与がバレた場合の対処法
  6. 夫婦間の贈与税がバレた場合の手続き
  7. まとめ|夫婦間の贈与はバレれないと安易に考えず非課税制度の活用を

夫婦間の贈与がバレる理由は税務署の強力な権限

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夫婦間の贈与がバレる理由は、税務署が情報収集や調査において強力な権限を持っているためです。

主なバレる理由としては、税務署が「お尋ね」「不動産の登記」「預金口座の調査」「相続税の申告」などを通じて情報収集や調査をしていることが挙げられます。

以下では、夫婦間の贈与がバレる理由の詳細について解説します。

1.「お尋ね」で夫婦のお金の流れを捕捉できるから

夫婦間の贈与がバレる理由の1つ目は、「お尋ね」によって税務署が申告内容や税金について本人に確認できるからです。

「お尋ね」をおこなうのは管轄の税務署などで、文書で問い合わせてくるのが一般的です。

「お尋ね」のテーマは多岐にわたります。

たとえば、不動産の購入資金の調達方法、相続税、インターネット取引などがあります。

「お尋ね」には法的な拘束力がなく、回答しなくても罰則はありません。

ただし、「お尋ね」に対して嘘の内容で回答したり、無視したりすることがきっかけで、夫婦間の贈与がバレることもあります。

2.不動産の名義変更(登記)から情報収集しているから

夫婦間の贈与がバレる理由の2つ目は、「不動産の名義変更(登記)」から情報収集をおこなっているからです。

先述の「お尋ね」は、不動産の名義変更をおこなった人の中から対象者を抽出して送付しているといわれています。

「お尋ね」には、不動産の購入資金の調達方法を確認する項目があり、その回答や調査の内容をきっかけに、夫婦間の贈与がバレることもあります。

3.夫婦間の口座移動を調査できるから

夫婦間の贈与がバレる理由の3つ目は、名義者本人の了承なしに「預金口座を調査」する権限を税務署が持っているからです。

対象者本人はもちろん、配偶者や関係者などの口座も調査可能であり、特に大きな金額の入出金には目を光らせています

夫婦間で大きな金額の口座移動があれば、取引履歴が必ず残ります。

これが確かな証拠となり、夫婦間の贈与がバレることもあります。

なお、税務署は過去10年にわたる預金口座の動きを調査することが可能といわれています。

4.相続税の申告内容からバレるから

夫婦間の贈与がバレる理由の4つ目は、「相続税の申告」の内容から調査がおこなわれるためです。

たとえば、夫婦の口座間で大きな金額を移動させた後、数年間は贈与がばれない状況だとしましょう。

しかし、その後の相続税の申告時に、その内容からさかのぼって調査がおこなわれることで、贈与がバレることもあり得ます。

夫婦間の贈与がバレる典型的な3つのケース例

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「夫婦間の財産移動なら、2人の間で秘密にしておけばバレるわけがない」という思い込みは禁物です。

なぜなら、些細なことをきっかけに、夫婦間の財産移動がバレる場合があるからです。

ここでは、その代表的なケースを3つ紹介します。

1.夫婦間で現金手渡しをおこなってバレるケース

「現金手渡しで贈与をすれば証拠が残らない、だから贈与がバレるわけがない」と考える人もいるかもしれません。

しかし、先述のように税務署には、預金口座を調べる権限があります。

税務署では、対象者本人だけでなく、配偶者や家族などの口座も調査することが可能です。

たとえば、妻の口座にまとまった入金があった履歴が残っていれば、その出所を追求されることで贈与税逃れがバレることもあり得ます。

2.相手に別荘や車をプレゼントしてバレるケース

配偶者へ高額なプレゼントを贈ったことで贈与税がかかることもあります。

たとえば、資産家が配偶者に高級リゾートの別荘や高級車、ハイジュエリーを贈った場合などです。

贈ったのが不動産の場合、結婚から20年以上経過した夫婦間での居住用の土地や建物、購入資金などは原則として贈与税の対象になりません。

しかし、居住用ではない別荘は贈与税の対象となる可能性があります。

また、車の場合、日常の買い物などに使う大衆車であれば、贈与を指摘されるリスクは低いと考えられます。

しかし、配偶者名義の車がすでに存在し、さらに追加でもう1台高級車をプレゼントした場合は、贈与税の対象となる可能性があります。

3.離婚成立前に財産を分与してバレるケース

離婚成立後の財産分与は、相続税や贈与税の対象にはなりません(夫婦が共同で形成した財産の範囲内)。

しかし、離婚成立前の夫婦間の財産移動は贈与と見なされ、贈与税の対象となるため注意が必要です。

なお、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築き上げた財産を、離婚の際に分配する制度などを指します。

夫婦間の贈与税の過少申告・末申告がバレる場合の罰則について解説

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夫婦間の贈与が過少申告・末申告だった場合、加算税や延滞税が発生し、刑事罰の可能性もあります。

その詳細について解説します。

1.贈与税の制度の基本知識

夫婦間の贈与に関する罰則について解説する前に、まず贈与税のルールについて確認しましょう。

贈与の際に税金が課せられない制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。

それぞれの特徴は以下のとおりです。

制度 特徴
暦年課税 年間に贈与された財産の合計額に応じて課税する方式
相続時精算課税 合計2,500万円まで贈与税がかからない一方、相続税で精算する方式

たとえば、配偶者(受贈者)が贈与を受けた場合、贈与の年間合計額のうち110万円以下(基礎控除の範囲内)は贈与税が発生しません

また、年間110万円以下の範囲内の贈与であれば、申告も必要ありません。

以前の制度では、暦年課税には年間110万円以下の基礎控除がありましたが、相続時精算課税にはありませんでした。

しかし、2024年1月から相続時精算課税にも年間110万円以下の基礎控除が設けられています。

この基礎控除の範囲内を超えて配偶者に贈与をしたにもかかわらず、適切な申告をしなかったことがバレた場合に、以下のようなペナルティが発生する可能性があります。

2.加算税が発生する

夫婦間で大きな金額の口座移動があったり、高級車をプレゼントしたりした場合などには、贈与税の申告が必要となります。

この申告は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間におこなう必要があります。

贈与税の申告期限を過ぎても、申告をしなかったり、適切な手続きを取らなかったりしたことがバレる場合は、加算税が発生する可能性があります。

加算税には内容に合わせて以下の3種類があります。

加算税の種類 内容
無申告加算税 申告すべき期日までに申告しなかった場合に発生する
過少申告加算税 申告すべき税額よりも少なく申告した場合に発生する
重加算税 申告すべき期日までに申告せず、偽装・隠蔽による悪意がある場合に発生する

これらのうち、贈与がバレることでの最も厳しいペナルティは重加算税です。

たとえば、夫婦間で多額の現金を手渡しで移動させ、贈与税を免れるためにそれを意図的に隠していた場合などに発生します。

重加算税は以下のように、「無申告」と「過少申告」の場合で税率が異なります。

状況 重加算税の税率
無申告の場合 40%
過少申告の場合 35%
※過去に同じ税目で無申告加算税や重加算税が課せられた場合は、さらに税率が加算される可能性があります。

3.無申告、過少申告がバレる場合の税金はいくら?

夫婦間での贈与がバレる場合、本来納める贈与税が300万円だった場合、無申告だった場合と、過少申告だった場合では以下のような計算になります。

【無申告だったことがバレる場合】
贈与税300万円+重加算税120万円(300万円×40%)=合計420万円

【過少申告だったことがバレる場合】
(贈与税300万円のうち、200万円は納税済)
追加の贈与税100万円+重加算税35万円(100万円×35%)=合計135万円

4.延滞税が発生する

贈与税の納税が遅れると、上記の加算税以外に、延滞税のペナルティが加わります。

たとえば夫婦間で多額の口座移動があり、贈与税を納めるべきなのに本来の納期限を超えているような場合です。

延滞税は、本来の納期限(法定納期限)の翌日から完納するまでの日数で計算されます。

計算式は以下のとおりです。

納付すべき贈与税の額×延滞税の割合×期間÷365日=延滞税の額
※延滞税の額は100円未満の端数切り捨て

この計算式内の「延滞税の割合」の部分は、納期限の翌日からの経過期間によって以下のように税率が異なるのでご注意ください(令和3年1月1日以降の場合)。

申告書の提出日の翌日からの期間 税率
2ヵ月を経過する日まで A:年7.3%
B延滞税特例基準割合+1%
上記のいずれか低い割合
2ヵ月を経過した翌日以降 A:年14.6%
B延滞税特例基準割合+1%
上記のいずれか低い割合
出典:国税庁「延滞税の計算方法」(外部リンク)

5.贈与税には時効がある

贈与税申告の時効は、善意(贈与税の納付について知らなかった場合)と悪意(贈与税の納付に知っていて隠した場合)で以下のように異なります。

なお、時効が適用される起算日は、贈与税を納めるべき年の3月16日になるのが原則です。

状況 時効成立までの期間
善意だった 6年間
悪意だった 7年間

6.刑事罰や罰金もあり得る

贈与税の無申告は脱税とみなされ、刑事罰が科せられる場合もあります。

贈与税に関する刑事罰で重要なのは、たとえ脱税の意思がなくても、刑事罰の対象となる可能性があることです。

脱税の意思があった場合と、なかった場合のそれぞれの刑事罰と罰金の内容は以下のとおりです。

状況 刑事罰と罰金の内容
贈与税の脱税の意思があった 懲役5年以下または500万円以下の罰金
贈与税の脱税の意思がなかった 懲役1年以下または50万円以下の罰金

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贈与税を申告しないとどうなる?無申告に対する罰則と節税の方法を解説

夫婦間の贈与税の回避方法|基礎控除や非課税の特例を利用する

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夫婦間で財産移動をしても、ポイントを押さえておこなったり、一定額が非課税となる特例を活用したりすれば贈与税が発生することを回避できます。

その具体的な方法を解説します。

1.年間110万円以下で贈与をおこなう

夫婦間の資産の移動において、「暦年課税」と「相続時精算課税」の制度をしっかり活用すれば、「贈与がバレるかも……」といった心配をする必要がなくなります。

先述のとおり、課税が発生しない贈与の制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」があり、どちらを選んでも贈与の年間合計額が110万円以下は贈与税が発生しません

ただし、両制度の基礎控除は、被相続人(遺贈者)が死亡する前の贈与の扱いが以下のように異なるため、注意が必要です。

制度 贈与の扱い
暦年課税 被相続人が亡くなる直前の贈与が相続財産に加算される
相続時精算課税 被相続人が亡くなる直前の贈与が相続財産に加算されない

2.目的を明確にして贈与をおこなう

国税庁では、贈与税がかからない非課税の財産を以下のように定めています。

夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

引用:国税庁No.4405 贈与税がかからない場合

つまり、夫婦間で現金の手渡しや預金の移動があっても、それが生活費、教育費などの名目なら贈与には当たらないということです。

なお、いくらまでの金額なら生活費や教育費として認められるのかについての規定はありません。

3.夫婦の共有口座で生活費を管理する

前項で解説したように、目的が生活費や教育費であれば、夫婦間で資産の移動があっても贈与にはなりません。

たとえば、そのご家庭でかかる平均的な生活費を毎月、夫婦の共有口座に入れて管理することで、生活費であることがより明確になります。

共有口座なら、年間の基礎控除額を超えるお金の振り込みがあっても、贈与税の申告漏れを指摘されるリスクはありません。

ただし、生活費を大きく超えるお金がこの口座に振り込まれ、嗜好品などに使われている場合は、贈与税が発生するリスクもあります。

4.おしどり贈与を活用する

通称「おしどり贈与」の正式名称は、「贈与税の配偶者控除の特例」です。

この制度では、夫婦間で居住用不動産を贈与した際、基礎控除とは別に2,000万円までの控除を受けることが可能です。

ここでいう居住用不動産とは、夫婦が住むための土地や建物、権利を指します。

この特例では、物件を贈ること以外に、購入資金の贈与も控除の対象となります。

ただし、おしどり贈与には適用要件があり、以下のすべてを満たす必要があります。

1. 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与がおこなわれたこと。
2. 配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

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贈与税の配偶者控除の適用要件は?デメリットやメリットと注意点を解説

夫婦間の贈与がバレた場合の対処法

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夫婦間の贈与の未申告や過小申告については、税務署にバレる前に申告または修正申告をするのが賢明です。

しかし、税務署から指摘されてしまった場合は、誠意を持って対応し、速やかに納税するのが基本です。

以下にその詳細を解説します。

1.「お尋ね」に誠意を持って返答する

先に解説したように、「お尋ね」とは、税務署が申告内容や税金について文書で問い合わせてくる行為を指します。

たとえば、配偶者に高額の資産を贈っていて、その内容に関する「お尋ね」があれば、税務署が夫婦間の資産移動を把握している可能性が高いです。

それにもかかわらず、「お尋ね」に対して、嘘の内容で回答したり、無視したりすることで、税務調査に発展することもあるため、誠意を持って正直に回答するのが最善です。

2.未申告がバレた場合はすみやかに納める

夫婦間の大きな資産移動が未申告の場合、意図的に隠そうとしたなど悪質性が高いほど、ペナルティも重くなります。

また、未申告の期間が長くなるほど延滞税の負担が重くなります。

税務署にの末申告がバレている場合、適切な対応をせずに放置することで得をすることは何もありません。

末申告がバレた場合は、すみやかに納税するのが得策です。

夫婦間の贈与税がバレた場合の手続き

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贈与税の支払い方法には、数多くの種類があります。この中からご自身に合った方法を選びましょう。

キャッシュレス納付 ・ ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
・ インターネットバンキング等
・ クレジットカード納付
・ スマホアプリ納付
キャッシュレス納付以外の納付方法 ・ コンビニ納付(QRコード)
・ コンビニ納付(バーコード)
・ 金融機関または所轄の税務署の窓口で納付

関連記事
贈与税の計算方法は?非課税になる4つの特例についても解説!

まとめ|夫婦間の贈与はバレれないと安易に考えず非課税制度の活用を

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本記事の冒頭で説明したとおり、税務署は、夫婦間の贈与に関する情報収集や調査ができる権限を持っています。

また、贈与税には6年(または7年)の時効があり、刑事罰の可能性もあります。

贈与税の脱税は重い罪に問われることもあるため、「夫婦間の贈与はバレるわけがない」と安易に考えないようにしましょう。

年間110万円以下の非課税枠や、おしどり贈与などの非課税制度を活用して、法令を守りながら負担を抑えていくことが重要です。

関連記事
夫婦間の贈与税はどんな場合に発生する?10個の事例で解説

本間貴志
本間貴志(著者)
金融・不動産ライター。ビジネス書/実用書制作のプロ集団、アスラン編集スタジオの社員ライターを経て2016年に事務所を設立。これまでに著名人、起業家、エグゼクティブ層など800名以上のインタビュー実績がある。保有資格は、賃貸不動産経営管理士、WEBライティング実務士、SEO検定1級など。